雇用主が生殺与奪の権を握る制度
労働力を確保するため、カタールは長きにわたって「カファラ」という労働契約制度を実施してきた。これは、「スポンサー制度」とも呼ばれており、雇用主が保証人となって外国人労働者に職を提供し、ビザを発給するというものだ。
「スポンサーとなるカタール人が全ての生殺与奪の権を握っています。いくら現場が過酷でも、母国に帰ったり転職をしたりすることが許されないことも少なくないようです」(国学院大学教授の細井長氏)
悪名高きこの制度は国際的な批判を受けたため、カタール政府は'16年に廃止を発表し、'20年に転職、出国の自由を保障する新たな法律を制定した。
「余裕のある企業、雇い主はきちんと法律を守っていると思いますが、それが末端の労働者にまで行き届いているかについては疑問が残ります。また、カファラ制度の中で長く過ごしてきたカタール人たちは、労働者の保護や労災への真摯な取り組みの必要性を深く理解していない。政府の役人たちは、突然の国際的な批判の高まりに困惑しているはずです」(細井氏)