自分の家族が、戦争を理由に外国に抑留され、労働を強いられていた側だったら、あなたはどう思うだろう。そして逆に、自分の家族が、捕虜を管理する側だったらどう思うだろう。

第二次世界大戦終戦の終戦記念日から77年以上経った今、8月15日を迎えてもなお、10年以上不当に拘束されていた「シベリア抑留」の現実と、その家族の姿を描いた映画が公開された。タイトルは『ラーゲリより愛を込めて』。瀬々敬久監督のもと、主演の二宮和也さんをはじめ、北川景子さん、松坂桃李さん、中島健人さん、寺尾聡さん、桐谷健太さん、安田顕さんら錚々たるスタッフが名を連ねる。

試写を観た人の中には、「この作品ではじめてシベリア抑留について知った」という声も多い。このシベリア抑留について、雑誌の特集記事で取材を担当したのがニューズウィーク日本版の記者・小暮聡子さんだ。実は小暮さんの祖父は、戦中は岩手県釜石市の連合軍捕虜収容所長となり、BC級戦犯として巣鴨プリズンに収監された経験を持つ。つまり「捕虜を管理した側」の家族だ。高校生のときにその事実を知り、元捕虜との交流を続けてきた小暮さんが、この映画を観て、そして取材を通して改めて知ったこととは。

 

1945年以降も「戦後ではない」日本人がいた

81年前の1941年12月8日未明(日本時間)、日本軍がハワイ・真珠湾を攻撃して太平洋戦争に突入した。そして、1945年8月15日に日本が敗戦。1931年の満州事変を起点とすれば足掛け15年におよぶ戦争が終結したわけだが、一部の日本人にとっては、この日を境に「戦後」とはならなかった。満州や朝鮮半島、樺太、千島などにいた日本の軍人や民間人など約60万人がソ連軍の捕虜として旧ソ連領に連れ去られ、数年にわたって強制労働に就かされたからだ。いわゆる「シベリア抑留」である。

開戦日の翌日である12月9日、シベリア抑留を描いた映画『ラーゲリより愛を込めて』(瀬々敬久監督)が公開された。原作は辺見じゅん氏によるノンフィクション『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(文春文庫刊)であり、「実話」に基づく作品であるとされている。

1989年に刊行され、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞

主演は、過去には映画『硫黄島からの手紙』で日本兵を演じた二宮和也さん。二宮さん演じる実在の人物、山本幡男氏が満州でソ連軍の捕虜となり、シベリア・ハバロフスクの収容所(ロシア語で「ラーゲリ」)で死と隣り合わせの日々を過ごしながらも、仲間を鼓舞しつつ帰国(ダモイ)の日を信じ懸命に生きる。そして、日本で山本の帰りを11年待ち続けた妻モジミ(北川景子さん)と幼い4人の子供たちの元に、奇跡が起きる――というストーリーだ。

筆者は10月に試写を観たが、二宮さんをはじめ俳優さんたちの演技は胸に迫るものがあり、心を打たれた。ここでは映画評をするつもりはないのだが、鑑賞後に強く考えさせられたのは、「今、この映画を観る意義」についてだ。

映画製作側が「運命に翻弄されながら再会を願い続けた2人の11年に及ぶ愛の実話」と謳っているように、本作はシベリア抑留を舞台にした「人間についての物語」だ。それに加えて、ロシアがウクライナを侵攻している今、そしてウクライナにも戦後、日本人が抑留されていたことからも、この映画はいやおうなしに「戦争とは何か」を突き付けてくる。

2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻はいまだに収束のめどが立たない。写真は2022年3月、ウクライナ・ハリコフの学校 Photo by iStock