2022.12.26
17人死亡の「漁船転覆事件」、その「謎に満ちた原因」を解き明かす…『黒い海』が世に出るまでの一部始終
1 担当編集者から装幀デザイナーへの電話
「あ、大野さん、ご無沙汰しています講談社現代新書の青木です。実は私、久しぶりにノンフィクションの単行本を担当することになりまして、そのカバーまわりの装幀デザインを、久しぶりに大野さんにお願いできたらと思いまして、電話をさしあげた次第です」
「あら、お久しぶりですね。ありがとうございます。それは、どんな本なんですか?」
「はい。2008年に実際に起こった、漁船の沈没事故がテーマなんですけど、とても不思議な点がいろいろあって、ちょっとミステリーのような話なんです。この事故について3年ぐらいかけて、ずっと調べている伊澤理江さんというジャーナリストがいまして、その方が著者です。17人もの方が亡くなられている大きな事故だったのですが、事故そのものは、あまり知られておらず、僕も初めて話を聞いた時には、「(このテーマで)1冊の本にするのは厳しいんじゃないか」ぐらいに思っていたのですが、著者と原稿をやりとりしていくうちに次第にスゴい本になってきまして……ということで、近日中に一度打ち合わせをお願いできますか?」
「わかりました。では●月×日に、阿佐ヶ谷駅前の喫茶店で……」