「朝に目覚めて、夜には眠くなる」体が持っている24時間のリズムのふしぎ。前回〈朝、勝手に「目が覚める」のはなぜか? 生命の「24時間リズム」をつかさどる“スゴすぎる仕組み”〉では、全身の時間をひとつに調整しているのが、脳の「視交叉上核」であることをご紹介しました。
しかし脳から全身へ、どのように時間情報を伝えているのでしょうか。驚きのネットワークシステムを解説します。
※本稿は、岡村 均『時計遺伝子』を一部再編集の上、紹介しています。
視交叉上核はどうやって全身にリズムを伝えている?
視交叉上核は脳の中にあります。脳から全身に情報を伝える方法としてまず思い浮かべるのは、神経です。
神経は、脳と脊髄からなる中枢神経と、全身の隅々まで分布する末梢神経に大きく分けられます。末梢神経は、体の知覚・運動を制御する体性神経系と内臓・血管などの自動的制御に関わる自律神経系に分けられます。
このような神経の中でも、視交叉上核からの時間情報を伝達しているのは自律神経系で、多くの臓器にいく交感神経と副交感神経の両方に出力されます。

眼で光を受け取るのを「視交叉上核のインプット(入力)」とするならば、視交叉上核でつくられる24時間リズムをアウトプット(出力)するルートが自律神経系です。
自律神経系とは、呼吸や体温調節、食べ物の消化など、意識しなくても生命活動を維持するのに必要な生理現象をコントロールしている神経系です。