CA、看護師…特定の職業の「がんリスク」が高いのには、「生体リズム」が関わっているかもしれない
本来、人は夜になれば眠くなり、朝になれば目が覚めます。しかし、誰もがそんな生活を送っているわけではありません。夜中も営業しているコンビニもあるし、仕事が朝までかかってしまったなんてこともあるでしょう。
そうした生活リズムの乱れは、がんの発症リスクにつながる可能性があるといいます。一体、どんなメカニズムがあるのでしょうか。生体リズム研究の第一人者で、『時計遺伝子――からだの中の「時間」の正体』の著作がある岡村 均さんの解説で、生体リズムとがん発症の関わりを見てみます。
※本稿は、岡村 均『時計遺伝子』を一部再編集の上、紹介しています。
垢が剥がれ落ちてもやせ細らないわけ
細胞は、分裂をすることで数を増やします。私たちの体は、一見すると常に同じ状態を保っているように思えますが、実は常に老化した細胞は死んでいき、同じ数だけ新しい細胞が生まれることで、一定の状態を保っています。
皮膚から出てくる垢(あか)は死んだ細胞から構成されていますが、毎日垢(死んだ細胞)ができて剥がれ落ちても痩せ細らないのは、同じ数だけ皮膚の奥で細胞分裂が起き、同じ数の細胞が補充されているからです。

この細胞分裂は、約1日に1回起きていることがわかっています。つまり、24時間リズムをとっているわけです。
因果関係をどうやって示すか
もちろん、同じ24時間だからといって、「細胞分裂も時計遺伝子によって制御されている」と、すぐに言い切ることはできません。
「時計遺伝子の制御によって細胞周期も約24時間になっている」のか。逆に、「細胞周期が約24時間であることが、生体リズムが24時間である理由になっている」のか。それとも、たまたま両者とも24時間に近いだけで全く別々の現象なのか。単に「24時間という共通点がある」というだけでは、どちらが原因でどちらが結果なのかという因果関係を示すことはできませんし、たまたま一致しただけで関係ないのかもしれません。

サイエンスでは因果関係を大切にしています。時計遺伝子と細胞分裂の関係について、どのような実験を行い、どのような結果が得られれば、因果関係を示すことができるのでしょうか。
細胞と体内時計の関係性を、肝臓を使った実験で研究した例があります。アルコールを分解する臓器として有名な肝臓は、じつは人体のなかでも驚異的な再生能力をほこる場所ですが、この実験から意外な事実がわかってきたのです。