2023.03.28

人生に一度きりの「死」を後悔に満ちたものにしないために…「上手な最期」の迎え方

だれしも死ぬときはあまり苦しまず、人生に満足を感じながら、安らかな心持ちで最期を迎えたいと思っているのではないでしょうか。

私は医師として、多くの患者さんの最期に接する中で、人工呼吸器や透析器で無理やり生かされ、チューブだらけになって、あちこちから出血しながら、悲惨な最期を迎えた人を、少なからず見ました。

望ましい最期を迎える人と、好ましくない亡くなり方をする人のちがいは、どこにあるのでしょう。

*本記事は、久坂部羊『人はどう死ぬのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。
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それでも怖いものは怖い

都合のいいイメージで目の前の恐怖をごまかすのもいいですが、それでは上手な最期を迎えるための準備にはなりません。

死ねないことの恐怖を頭で理解したとしても、死の恐怖は和らがないでしょう。死の恐怖は理屈ではなく感情だからです。

私の妻の知人は、死ぬのが恐くてたまらないらしく、健康情報は大好きですが、死や病気に関することは、妻が口にしただけで「恐いからやめて」と耳をふさぐそうです。自分も含め、人が死ぬのはわかっているけれど、そんなことは考えたくもないし、準備するなどとんでもないというわけです。

別の私の知人は、若いときから死ぬのがイヤで、人一倍、健康管理に熱心なのですが、いかんせん高血圧で、それが悩みのタネでした。薬も副作用が恐くて、なんとか自然な方法で血圧を下げたいのですが、そう力めば力むほど血圧は上がってしまう。映画館でとなりの席の客の、「××で血圧が下がった」などという会話を聞いてしまうと、その××が何なのか、気になって映画のストーリーが頭に入ってこないと話していました。

片や若い世代(三十代)に話を聞くと、ある女性(私の娘ですが)は死の恐怖など感じたこともないと言いました。子どものころ、死んだらどうなるのかと考えて、恐ろしくて夜眠れなくなったことはないかと聞くと、「ない」の一言です。彼女には小さい娘がいるので、その子が大きくなるまではぜったいに死にたくないと思わないかとねると、思っても仕方がないし、早くに親を亡くす子どももいるので、仮に自分が早く死んでも特別なことではないと答えました。

まだ若いので、死を実感できていないのかと思いましたが、災害や交通事故で自分や夫、あるいは娘が死ぬことも考えないではないとのことです。それで恐怖を感じないのかと聞くと、そうなったらなったで仕方がないとの答え。あまりに冷静というか、達観しているので驚きました。

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