2022.12.20

乳児が重度の酸欠症になって‟顔が紫色”に…農業の衰退が、恐ろしい「ブルーベビー症候群」を引き起こす理由

世界の食料需給がひっ迫している。コロナ禍による物流の混乱や、ウクライナ戦争により食料が値上がりしたのも記憶に新しいが、近年相次いでいる異常気象は今後も起こると予想され、世界の農業生産の見通しに暗い影を落としている。

そんな中、世界の「土」問題がいよいよ深刻化していると、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏は指摘する。化学肥料・農薬は農業生産を飛躍的に高めたが、その反面、土壌の劣化をまねき、「土がパサパサになってしまった」と鈴木氏はいう。

化学肥料や農薬が多用されたことで、土壌の中の微生物が減少し、土の中の生態系が破壊されつつある。そして、その環境が人体への悪影響を及ぼすことにもつながるというのだ。前編記事に引き続き、鈴木氏の著書『世界で最初に飢えるのは日本』より一部を抜粋してお届けする。

化学肥料の使いすぎで「根」が張らなくなった

土壌の中の微生物が果たす役割はほかにもある。
植物の根には、菌根菌と呼ばれる微生物が付着している。この菌根菌は、植物の根から炭水化物やアミノ酸を吸収し、窒素やリンなどの栄養分を、植物に供給している。

化学肥料の多用によって、土壌の中の微生物が減ってしまうと、このシステムが崩れて、植物の根が張らなくなってしまう。

本来、植物の根がしっかり張っていれば、少しの水でも植物がしっかり吸収してくれる。だが、植物の根が張らなくなると、土から水を吸収する力が弱くなる(東京大学非常勤講師の印鑰智哉氏の講義資料などによる)。

そのため、現代農業では、以前よりも大量に水をまかなければならなくなっている。
かつてよりも多くの水が必要になっており、その分、気候変動による渇水に弱くなっている。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大