2022.12.24
# ライフ

あなたたちは「不健康」ではない!…気にしすぎてはいけない「健康の基準値」を一挙大公開

前編記事『不健康でも問題ない…認知症治療の第一人者が語った「ほんとうの健康」のための思考法』では、「痛み」や「冷え」、「物忘れ」などについて、「無理しない」健康法を紹介してきた。本記事でも、引き続き不健康との新たな付き合い方を取り上げていく。

つらい持病、長引く不調に「もう健康体には戻れないのだろうか」とくよくよ悩む—。そんな生き方を続けていては、幸せは逃げていくばかり。ちょっとした発想の転換で、人生はパッと明るくなる。

無理に痩せないもっと太ろう

年を取ってからは、健康のために太らないようにしていたのに、どうもお腹周りに贅肉がついてきた。せっかく食べたいものを我慢しているのに、なぜなんだろう—。

体重計に乗って、増減を繰り返す体重を見て、一喜一憂してしまう人は多いのではないか。

しかし、そんなことは気にしなくていい。

中高年の場合、若い頃に比べると、代謝が落ちて脂肪がつくのは当然。多少太ったとしても、それは自然なことだし、むしろ、そのほうが長生きする確率が高まる。

60歳を過ぎてからの食事で大事なのは、質よりも量。好きなように食べてカロリーを蓄え、体重を増やしたほうがいい。食べたいものは身体が欲しているものだから我慢しなくていいのだ。

肥満度を表す指標のBMI値でいえば、22が理想値で、病気になりにくいと一般的には言われている。

だが、それはあくまで中年までの話。60歳を過ぎたら、27を超えてもまったく問題はない。身長が170cmならば、体重は80kgあってもいい。小太り体型であるくらいが丁度いいのだ。

'08年に発表された、40〜70代の約9万人を対象に行われた茨城県の調査では、60代のBMIは男性で約26、女性は約23だともっとも死亡のリスクが低くなることが分かっている。

その一方で、痩せすぎで、低栄養状態に陥っている人が多いのは見逃せない。'18年に厚生労働省が行った「国民健康・栄養調査」では、60歳以上の低栄養状態者は男性で約13%、女性で約20%を占めている。

「カロリーが高い料理は控えたほうがいい」というのはあくまで一般論。中年まではメタボリックシンドローム対策で食事制限をしていたかもしれないが、60歳を過ぎてからは無意味どころか、リスクのほうが多い。

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「年を取ってからダイエットしようとすると、減るのは脂肪よりも筋肉です。その結果、歩くことも難儀になる。転倒するリスクも高まります。もし、転んで大腿骨を骨折して入院するハメになったら、寝たきりになってしまうかもしれません」(熊本リハビリテーション病院医師の吉村芳弘氏)

筋肉が減ると、心臓病や脳卒中のリスクも高まる。筋肉は食事で摂取した糖を溜めこむ働きがある。筋肉量が減ると、その機能も衰え、血糖値が乱高下しやすくなり、血管には大きな負担がかかる。動脈硬化がどんどん進行してしまうのだ。

恐ろしいのは、一度、体重と筋肉が減ると、負のスパイラルに陥ってしまうことだ。自分でも気づかないうちに、低栄養状態になって筋肉量が落ち、疲れやすくなる。すると、身体機能が衰え、外出が億劫になる。そうして、運動量が減ることで食欲もなくなり、ますます体重が減っていく。

無理な運動をしたり、味気のない食事をしたりする必要はない。節制しすぎて、食事への興味が失われてしまうと、肉体だけではなく、心も老け込んでしまう。

「身体に気を遣って、野菜を積極的に食べる必要はありません。肉や魚などのたんぱく質を取るほうが長生きできます。目安としては、体重の1. 2〜1. 5倍のグラム数のたんぱく質を食べることが理想的。目安としては、一日当たり両手に収まるくらいの量です。

一日を通して元気に過ごすためには、朝からたんぱく質を取ってください。おすすめなのは、納豆入り卵かけご飯。朝でも無理なく食べられ、たんぱく質を多く摂取することができます」(吉村氏)

'21年、99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんも毎朝500キロカロリーを越える食事を取り、3日に一回は牛肉ステーキを食べていたという。そんな豪快な食生活を送っていた寂聴さんが死ぬ間際までパワフルに活躍していたのは、多くの人が知るところだろう。

長生きの秘訣は食事を我慢しないこと。60歳を過ぎたら、体重なんて気にしなくていいのだ。

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