ベルリン「水槽破裂」事故が象徴する、ドイツ全体の“老朽化”と“機能不全”

政治家は「中国依存」を憚らず

約1500匹の魚もろとも…

12月16日早朝5時43分、ベルリンのど真ん中でアクアリウムが崩落した。ドーナツのように丸く建てられたラディソンホテルの、ドーナツの穴の部分の真ん中に聳え立つ円筒形のアクアリウムだ。

地上より5mほどのところから始まる円筒形の水槽は、高さ14m(16mという報道も)で、直径11.5m。そして、最大のアトラクションが、その水槽のど真ん中に組み込まれたやはり円形のエレベータ。エレベータの壁は透明である。

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つまり、何が凄いかと言うと、エレベータに乗って水槽内を上下する間に、その透明の壁を通して、さまざまな魚が泳いでいるのが触れそうなほど間近に見えること。水槽はいくつかに区切ってあり、本物の珊瑚の間に熱帯魚が泳いでいたり、サメが横切ったり……。

一方、水槽を囲む形のドーナツ型のホテルでは、外側の部屋からはベルリンの素晴らしい景色が堪能でき、内側の部屋からは、アクアリウムの幻想的な風景が楽しめる。贅沢なアイデアだ。

また、ホテルに泊まらず、このアクアリウムのエレベータだけ楽しみたければ、世界50ヵ所以上でスペクタクルな水族館を展開している「シーライフ」(スコットランド発祥)に19ユーロを払って申し込めばよかった。

 

ところが前述のように、その巨大な水槽が17日早朝、突然破裂し、100万リットルの塩水が溢れ出た。辺り一帯が地獄絵のような大混乱に陥ったことは想像に難くない。約1500匹の魚も、ほぼ全尾がご臨終。

不幸中の幸いは、早朝だったため、水槽の下にも、その付近にも誰もいなかったこと。ホテルの部屋にも直接の影響はなかったが、地下には浸水したという。

2003年の12月に完成したこのアクアリウム、周りを壁などに支えられない独立型の水槽としては世界最大という触れ込みだった。

水深が14mと言われていたので、水槽の底には1平米あたり14トンの圧力がかかることは、中学生でもわかる。だからこそ、それを支えている技術の凄さに、私など数字に弱い人間でさえ感心したのである。

しかも、当時、設計をした建築家が、使われているアクリルグラスは、“たとえピストルで打っても穴が開くだけで絶対安全”と太鼓判を押していたので、余計に感心した。20年には大点検も行われたというが、結局、ピストルで打たなくても、水槽は勝手に崩壊した。

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原因に関してはこれから調査が始まるが、今のところ、素材疲労が疑われているという。おそらく今後、アクリルグラスのメーカーやら、建築家やら、施工した建設会社やら、運営会社やらの間で、熾烈な責任のなすりつけ合いが始まるのだろう。

シーライフは早速、「19ユーロはエレベータの使用料で、我が社は水槽には関知していない」という声明を出した。それにしても、水族館の水槽が破裂するなど、何だか発展途上国のようである。

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