2022.12.28
# 殺人事件
「あんたが悪いのよ!」67 歳夫と32歳息子を焼き殺した妻…法廷で明かされた「意外な素顔」
2021年11月17日、千葉県旭市で寝たきりの夫と長男を妻が殺害した放火殺人事件。その1年後に行われた裁判員裁判で明らかになったのは、誰にも頼ることができなかった妻の絶望だった――。
被告は小柄でおとなしそうな女性なのに
「ごめんね! あんたが悪いのよ!」
生きたまま炎に包まれる夫を前に、女はそう叫んだ――。

大橋とし子被告(66)が千葉県旭市の木造2階建ての自宅に火をつけ、夫・芳男さん(当時67歳)と長男・芳人さん(当時32歳)を殺害したのは2021年11月17日、早朝のことだった。
妻が殺人と現住建造物等放火の罪に問われた事件発生から1年……2022年12月12日から千葉地裁で同事件の裁判員裁判が行われた。
車いすで入廷した、とし子被告。肩まで伸びた髪には白髪も多く混じっていた。小柄でおとなしそうな雰囲気で、証言台で発する声も弱々しく、2人を殺害したとはとても思えない印象だった。
裁判の争点は2つ。芳男さんへの「同意殺人」、芳人さんへの「殺人罪」がそれぞれ成立するか。
芳男さんと芳人さんはともに寝たきりで、介護が必要な状態。とし子被告は逮捕直後に「介護に疲れた」とも供述していた。
これまでの裁判で被告は放火を認める一方、起訴内容については一部を否認。「病気で寝たきりになった芳男さんと心中するつもりだった」「芳人さんへの殺意はなかった」などと証言している。
夫と息子を献身的に介護していた妻であり、母であったはずの被告。そんな彼女を殺人へと追い詰めたものとは――。
まず、事件当時の大橋家を振り返ってみよう。