2022.12.29
「フードポルノ」「貧困ポルノ」…性的じゃないものを、なぜ「ポルノ」と呼ぶのか? 「美学」が教える“一つの答え”
最先端の哲学の議論を用いて身近な物事について考える——。
そんなスタイルの哲学入門書『世界最先端の研究が教える すごい哲学』(総合法令出版)が刊行されました。
たとえば、同書はこんな問題を扱います。
「フードポルノ」や「貧困ポルノ」といった「ポルノ」という語彙を用いた言葉を目にすることが増えましたが、なぜこれらの言葉は性的でもないのに「ポルノ」を含むのでしょうか?
「分析美学」という分野を専門とする村山正碩さんが解説します(本記事は同書の一部を抜粋、編集したものです)。
「ポルノ」を使った言葉の数々
ポルノグラフィ(以下、ポルノ)とは何でしょうか。私たちがこの言葉から思い浮かべるものといえば、アダルトビデオ、エロ本、官能小説など、性的興奮をかき立てるイメージや文章でしょう。
しかし、興味深いことに、近年では性的でないものが「ポルノ」と呼ばれるケースも見られます。これは英語圏で盛んな現象ですが、日本でもいくつか用例を確認することができます。例えば、日本語版ウィキペディアでは「フードポルノ」や「貧困ポルノ」といった項目が存在します(2022年7月現在)。
「フードポルノ」と呼ばれるものは、高カロリーな揚げ物やお菓子、また高級フレンチのような魅惑的で食欲をそそる料理の写真が典型的です。「貧困ポルノ」と呼ばれるものは、貧しい人々の姿や暮らしぶりを映した写真のうち、特に貧困や飢餓を強調し、単純化したものが典型的です。