人間の「意識」は、じつは「なんの役に立っているのか」よくわからなかった…!それでも「意識」が大事なワケ

それでも僕は夢を見る

数年前に、水野敬也氏のマンガ『それでも僕は夢を見る』(文響社)が、世間で話題になった。その前半は、だいたいこんな感じの話だった。

主人公は、いつも夢と一緒に生きてきた。しかし、第一志望の大学には受からず、好きになった人にも振り向いてもらえず、やりたい仕事に就くこともできなかった。そして、その後もつらい日々が続き、とうとう主人公は夢を捨ててしまうのである。

後半に何が起きたかはネタバレになるので省略するが、病気で死ぬ間際になって、主人公は「死ぬのが怖い」と思う。これまではつまらない人生だったし、これ以上生きたとしても、待っているのはつまらない人生だけだろう。それでも「生きたい」と主人公は思うのである。

【写真】それでも「生きたい」と願うそれでも「生きたい」と願う photo bygettyimages

主人公と自然淘汰

この話を、進化の文脈から考えてみよう。ポイントは2つある。

1つ目は、自然淘汰の観点からだ。主人公は、いろいろなことがうまくいかずに、つらい日々を送ってきた。そして、一人ぼっちで死んでいく。大ざっぱにいえば、主人公は、周囲の環境に適応していない個体といってよいだろう。つまり、主人公のような個体は、自然淘汰では進化しにくいと考えられる。

また、近年、ある総務政務官が、以下のような趣旨の発言をした。同性カップルは子供を作らないので、生産性がない。そこに税金を投入することは適切だろうか、というのである。

考えてみれば、ある意味、同性カップルは主人公に似ている。子どもを作らないので、自然淘汰では進化しにくいと考えられるからだ。

しかし、私たちひとり一人が生きていくうえで、進化のことなど考える必要があるのだろうか。いや、進化なんか、どうだってよいのである。それを以下で説明しようと思うが、とりあえずは2つ目の観点だ。

意識の進化

2つ目は、意識の観点からだ。

意識がどのようにして生じるのかは、たいへん難しい問題だ。現在における科学のテーマのなかで、もっとも解明されていないものの一つといってよいだろう。

しかし、意識と脳が相互作用をしていることは、ほぼ明らかになっている。したがって、物質である脳が、(少なくとも一見)非物質的な意識を生みだしている可能性は、非常に高いといえる。

【CG】物質である脳と非物質的な意識物質である脳が、非物質的と考えられる意識を生みだしている可能性が高い photo by gettyimages

おそらく、脳が複雑になっていくうちに、ある段階で意識が生じたのだろう。そして、意識には、強烈な自己保存に対する欲求がある。主人公が、死にたくないと考えたのは、この自己保存欲求のなせる業だろう。

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