「量子力学」が解き明かす「この世界の本当の姿」がヤバすぎた…! SFよりスゴイ「不思議な現実」

量子力学。それは物質の基本の姿、すなわち、この世界の基本の姿を解き明かそうとする理論だ。しかし、そこから導かれるさまざまな結論は、どれもわれわれの直観にあまりにも反している。

そんな量子力学をどう解釈するかをめぐっては、2つの代表的な方法がある。1つは、ニールス・ボーア(1885-1962)を中心に考えられた「コペンハーゲン解釈」。もう1つは、ヒュー・エベレット(1930-1982)が提唱した「多世界解釈」だ。現在、コペンハーゲン解釈が標準的な理論とされているが、それに異を唱える物理学者たちが主張しているのが多世界解釈である。しかしそれは、「この世界は無数に存在する」というSFとしか思えない世界像を主張する、一見、まともとは思えない解釈である。

多世界解釈では、なぜそんな世界が「必然」となるのだろうか? その答えは、じつはごく自然なロジックの積み重ねで導くことができるのだ。

その前に今回はまず、量子力学の世界がいかに不可解なものかをご覧に入れよう。

※本稿は、和田純夫『量子力学の多世界解釈』を一部再編集して紹介しています。

ミクロな原子のふるまいはマクロな物体とはまったく違う

われわれの身体や身のまわりの物体は、すべて「原子」というきわめて微小な粒子から構成されている。その大きさは種類によるが、1cmの1万分の1の、そのまた1万分の1程度である。これほど小さいということは、通常の大きさをもつ物体内でのその数は膨大だということでもある。

たとえば水1g(1立方センチメートル)の中には10の22乗個程度の原子(水素原子と酸素原子)が含まれている。これは100億個の100億倍のそのまた100倍である。地球上に人間がいくら増えたとしても、せいぜい100億人というレベルであることと比較してほしい。

このように、原子と通常の物体では、そのスケールがはるかに異なる。だとすれば、通常の物体のふるまいと、それを構成している原子のふるまいが、まったく異なるとしても驚くにはあたらない。実際、個々の原子(ミクロな粒子)のふるまいは、無数の原子が集まった通常の物体(マクロな物体)のふるまいからは想像もできないものであった。

そしてそのため、原子の実像が明らかになってきた20世紀初頭、「量子力学」という新しい物理学が誕生しなければならなかった。

【CG】20世紀の新しい物理学の誕生photo by gettyimages

量子力学の「意味」についての2通りの解釈

20世紀初頭、実験技術が発達し、原子一つ一つがかかわる現象の測定が行われるようになった。そして、原子の世界が、それまでの物理学の法則(古典力学、あるいはニュートン力学とよぶ)では理解できない、不思議な世界であることがわかってきた。物理学の法則を基本から考え直さなければならなくなったのである。

ボーアやゾンマーフェルトが先鞭をつけ、ハイゼンベルクがそれを発展させて1つの新しい体系をつくった。またシュレーディンガーは、アインシュタインやド・ブロイの流れをうけて、別個に彼の理論をつくった。2つの理論は外見上は異なるが、実質的には同等であることをディラックたちが示し、量子力学という学問が確立した(図1)。1920年代中頃の話である。

【図】量子力学の誕生には多くの人の貢献があった図1 量子力学の誕生には多くの人の貢献があった

確立したといったが、実際には、量子力学という「計算方法」だけが確立したといったほうが正確だろう。計算方法はわかったが、量子力学が表すミクロの世界が、日常的なマクロの物質の世界とあまりにも異なっていたために、その「本質的な意味」をどう把握するか、つまり理論の解釈は、すっきりとはしていなかった。

コペンハーゲンを本拠にしていたボーアを中心として考えられたコペンハーゲン解釈とよばれる考え方が、一応、標準的な理論とみなされ、現在でも多くの教科書にはそう書かれている。

しかしそれに不満をもつ人々、あるいは不明確な部分がまだ残っていると考える人々も多く、その結果として出てきた代表的な対案が多世界解釈である。

「多世界」という言葉が示すように、この解釈は「この世には無数の世界が共存している」という、一見、摩訶不思議なことを主張する。

しかし、じつはこれが量子力学のきわめて自然な解釈(そして筆者の意見では、もっとも理屈にあった解釈)であり、われわれの日常体験とも何ら矛盾していないというのが、この解釈の支持者の、そして私の主張である。

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