2023.01.01

「ありいんす」「そうざます」…江戸の遊廓で「吉原言葉」が発明された、深すぎる理由

『色道大鏡』は言葉の間違いだけでなく、手紙の書き方も指導しています。たとえば男の人がなかなか来てくれない時、「このごろ疎遠ですね」という意味で「御物どを」と書くことがあるが、それは「御とをどをしく」とか「御うとうとしく」と書いた方が優雅だ、とアドヴァイスしています。

「拝見」という言葉も「拝しそうろう」と書いた方が素敵で、「会ひたく」というところは「会ひましたく」と、「まし」を使うとやさしく聞こえて良いそうで、「御めにかかりまし」とか「様子聞きましそうろうて」とか「見ましたく」というようにするとやさしいなど、極めて具体的な指導をしています。

使う「紙」も指定

『色道大鏡』は使う紙の指南もしています。意外なのは、遊女の手紙は奉書紙に限る、という助言です。奉書紙は正式な書類に使うもっとも高級な紙のことです。正式で堅い印象があります。

江戸時代で手紙を書くといえば私たちは巻紙に書く姿を思い浮かべます。しかし、遊女は紙を継いで巻紙にして書くようなことはするな、と箕山先生は言っています。たとえかさばっても、紙を重ねた方がいいと言うのです。高価なきちんとした紙を使うことで、相手を尊重しているというメッセージになる、ということなのでしょう。また遊女の持つ高貴なイメージを損なうな、という意味なのでしょう。遊女は天女なのですから。