監督の力量は限定的
身も蓋もない話なのだが、「1試合あたりの平均勝ち点数」と「選手の年俸総額」は、正の相関(相関係数は0.75)を示している。つまり、ピッチ上にいる選手の年俸総額が高ければ高いほど、1試合あたりの平均勝ち点数は多くなるということだ。年俸の高いスタープレイヤーを集めれば集めるほどにチームは強くなっていて、年俸の低い選手が多く在籍するチームは年俸総額が低いほどに弱いということだ。1回1回の試合でどちらが勝利を収めるかを予測するのは難しいが、平均すれば、選手を選んだ時点でどの程度の勝利が見込めるかはわかってしまう。
ここから導かれる結論は、優秀な監督を一人呼んできてもチームが突然強くなるようなことはほとんどなく、チーム編成をするにあたっては一円も値段の高い選手を集めることができるかが、チームを強くするための鍵となる。要するに経営の問題と言えるだろう。高額な選手を抱えるチームが強いという傾向は、この論文だけでなく、多くのサッカー論文でも示されていることだ。
プロ野球と比べて、企業が全面にでていない「Jリーグ」は、収益性が低くなっているようだ。企業スポンサーを嫌う人にとっては、歓迎すべきシステムなのかもしれないが、選手の年俸が低いままでは、チームは強くならないということを肝に銘じるべきだろう。
さて、監督の手腕に話を戻そう。
原則的に、年俸総額が高いチームが強い傾向にあり、監督の力量は限定的であることを述べた。しかし、監督の力量が、ゲームに左右しないということもない。年俸総額は低い割に得点数が高ければその監督は優秀であり、年俸が高い割に得点数が低ければその監督は能力が低いということになる。
論文の発表された2013年当時であれば、フース・ヒディンク氏(日韓共催W杯の韓国代表監督などを歴任)、ジョゼ・モウリーニョ氏(レアル・マドリード監督などを歴任)が非常に優秀な監督の部類ということになる。