「噛まれて頭蓋骨にヒビ」「隠れても無駄」…人喰いヒグマに襲われた男から学ぶ「絶対に守るべき鉄則」

小倉 健一 プロフィール

頭蓋骨にヒビ

61歳のアレン・ミニッシュ氏は、アラスカ州のリチャードソン・ハイウェイから森の中へ、未開発の分譲地の土地調査のため歩いていた。トウヒやハンノキなどの植物が生い茂った森を行き来しながら、敷地の隅から隅まで測量用の旗を振って回ったのだが、途中で邪魔が入った。ヒグマである。

 

視線を上げると、30フィート(10メートル弱)先に巨大なヒグマがいた。ミニッシュ氏を確認したヒグマが近づいてくる。彼は急いでハンノキの茂みに避難したが、後ろから倒されてしまう。必死の思いでヒグマの開いた口に手を突っ込み、下歯とアゴをギュッと掴んだ。ミニッシュ氏は過去に、「犬の下アゴを掴めば、犬に噛まれない」という教訓があったことを思い出したのだという。ヒグマの臼歯によって手は血まみれになったものの、ヒグマは口を閉じることができなくなった。一命を取り留めたように思ったのも束の間、ヒグマは頭を猛スピードでひねり、口の中にある彼の手をほどいてしまった。それからミニッシュ氏を目がけて突進すると、頭を掴み、そして、2度噛んだ。ミニッシュ氏は頭蓋骨にヒビが入ってしまう。

ヒグマは、ミニッシュ氏の頭を噛んだものの殺そうとせず、そして食べようともせず、その場を去った。ミニッシュ氏は深い傷を追いながらも、持っていた携帯電話から自ら救急車を呼び、一命を取り留めたのだった。

ミニッシュ氏は、ヒグマに襲われたことをこう振り返っている。全文を引用する。

「自分を襲ったオスのヒグマは、何一つ悪いことはしていない、彼はただ歩いていただけだ。私とそのクマにとってまさに『場所が悪い』『タイミングが悪い』ということだ。クマ除けのベルを持っておくべきだったかもしれないが、私の持ち歩いているGPSは、いつもとても大きな音を出すのでその必要性は感じなかった。(クマに殺される幻影に悩まされるが)今はなるべく明るい気持ちでいようと思っている。哀れみに浸らないようにしてる。だって、生きるって決めたんだから」(同ニュースサイト)

ヒグマは、基本的には人間を襲うつもりがないが、逃げると捕獲本能が目覚めてしまう。ミニッシュ氏も、逃げなければひょっとしたら頭をかじられることもなかったかもしれない。

現地の警察当局によると、クマはミニッシュ氏を襲った後、その地域から逃走したという。

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