内外金利格差の縮小が起これば円高、株安
今年のおそらく後半以降に日米金利格差が縮小に向かう可能性は2つの要因から存在する。ひとつは日本の金融政策が「緩和からの出口」に向かうケース、もうひとつは米国のインフレ鎮静化、景気後退への移行とそれに伴うドル金利の低下だ。もっとも米国の利上げはまだ終了しておらず、ドル金利の下げ予想が浮上するのは年後半以降だろう。
図表2

その場合、どの程度の円高インパクトを想定した良いだろうか? 図表2は、2022年1年間の週間データによる日米金利格差の変化(横軸:10年物国債利回りの日米格差の前週末比差分)とドル円相場の週間の変化率(縦軸:週間引値ベース)の単回帰図だ。
日米金利格差が拡大すると円安・ドル高、金利格差が縮小すると円高・ドル安に変動する相関関係があることがわかる。最大値で1になる相関係数は0.61、説明度を示す決定係数は0.37であり、これは金利格差の変化でドル円相場の変化の37%が説明できることを意味する。また図中の近似線の傾きは6.56であり、これは1%ポイントの金利差縮小(拡大)で平均6.56%円高・ドル安(円安・ドル高)になることを意味する。
22年末のドル円相場131円をベースに考えると、1%の金利差縮小で8~9円の円高・ドル安を意味する。米国の次期景気後退が比較的軽度で、10年物米国債の利回りが現在の3%台後半から2%後半に約1%ポイント低下するならば、120円台前半程度の円高・ドル安の戻りが生じることになる。米国の景気後退が比較的深く2%の金利格差縮小なら、110円台半ばまでの円高・ドル安がめどとなる。
日銀の金融政策の変更で10年物日本国債利回りが上がる場合も同様に考えれば良い。ただし2023年末まで考えて10年物日本国債の利回りが上がる場合、その変化幅は0.25%か0.50%以下だろう。
ただしこうした金利格差と為替相場の関係性はいつでも安定的に見られるものではない。近年は双方の関係性が強くなっている局面だが、他の要因に市場参加者の関心が移り、金利差との短期的な関係性は消えてしまうこともある。
最後に日本の株価との関係を考えよう。昨年12月20日に日銀の政策修正が発表された時は、予想外のタイミングであったことが市場へのインパクトを強め、国債利回りは上昇、日本株は下落となった。今年以降、日米の金融政策変更で円高になる場合も、やはり円高・株安になるのだろうか?
おそらく120円台までの円高の戻りなら、一時的にはともかく大幅な日本株下落はなさそうに思う。しかし110円台まで一気に円高が進めば、日経平均でいったん2万円台前半までの株価下落を覚悟する必要があるだろう。