2023.01.13
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もしも名画『モナ・リザ』の感想を聞かれたら…「言葉のセンスが良い人」の答えは「視点」が違う

言葉のセンスは、生まれつきのものではない。誰にでも習得可能なものである。そう語るのは『教養のある人がしている、言葉選びの作法』の著者で言葉のプロ・齋藤孝先生。今回は言葉のセンス以前に重要な「視点」について、わかりやすく解説します。

『モナ・リザ』の感想でわかる「センスの良さ」

ルネッサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』の絵について、「いい絵だね」という感想は凡庸すぎて、言葉のセンスも何もありません。センスの有無というより、ただのコメントでしかありません。

では、少し工夫して、「『モナ・リザ』の謎めいた微笑み」と言ってみるのも、あまりにも有名すぎて手あかのついた視点とも言えます。

Leonardo da Vinci - Mona Lisa
 

そうしたありふれた視点を避け、背景に目を凝らして、「肖像画にしては、この背景には変わった趣がある、何か違う」「時空の異なる背景に、モナ・リザが浮かんでいるように見える」といった感想を述べると、この人の視点は何か違うと思わせることができます。

「時空」という言葉を使いましたが、こうした言葉のセレクトも、センス良く見せることにつながります。

目の付けどころを意識して『モナ・リザ』をよくよく見ると、背景が宇宙を思わせるというか、万物の生成を感じさせます。通常、肖像画ではこのような背景が描かれることはありません。ましてそこに妙齢の女性、モナ・リザの存在を違和感なく描き、私たちに見せているのがすごいのです。

この背景の技法は「空気遠近法」と言います。大気の性質を利用した技法を用いることで、色彩と色調の調和を図り、遠近感を醸成し、奥行きを感じさせる背景を作り出しています。ともすればミスマッチを起こしかねない背景と人物を、見事にマッチングさせているのです。ダ・ヴィンチの絵描きとしての技術が卓越しているのです。

モナ・リザの顔には、いわゆる輪郭線がありません。肉体と空気の境目がぼんやりしているのは、画期的な超絶技巧です。

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