「自分だけじゃないとわかって、勇気がもらえた」

「ヤングケアラーは自ら周りの人にSOSを発信することがほとんどないため、見つけることが難しい現状があります」
明るく優しかった母親が48歳の若さで若年性認知症を発生したことから、小学生でヤングケアラーとなった美齊津 康弘さん。現在は介護保険のケアマネジャーとして働きながら、買い物弱者を支えるウェブシステム「えんじょるの」を開発、運営している。

『48歳で認知症になった母』(漫画:吉田美紀子、原案:美齊津康弘/KADOKAWA)は、そんな美齊津さんが自らの子供時代の体験を原案にしたマンガだ。

主人公のやすひろさんの母親は、やすひろさんが小学校5年生の時に若年性認知症を発症した。会社を経営し毎晩遅くまで仕事をする父、遠方に嫁いでいる年の離れた姉、母を直視できない高校生の兄。やすひろさんは11歳にして、ヤングケアラーとなって母の世話や家事をするようになる。

『48歳で認知症になった母』(漫画:吉田美紀子、原案:美齊津康弘 / KADOKAWA)
 

かつては「自分のような境遇はレアケースなので、誰にも理解してもらえるとは思っていませんでしたし、話された人も困るだろうと思っていた」という美齊津さんだが、数年前から自分の体験を語るようになった。
それがどうマンガへとつながったのだろう。美齊津さんに話を聞いた。

「自分の体験を語ってみると共感されることが多く、中には『自分だけじゃないとわかって勇気をもらった』と言って下さる人もいて、私の体験が現在進行形で苦しんでいる人の役に立つことが分かりました。

でも自分を振り返っても、ヤングケアラーが自らSOSを出すのは難しい。それなら周りの大人たちが気付いて声を掛けてあげられないだろうか。子供に関心を向けてくれる大人を世の中に一人でも多く増やせたらいいのに。

そのように考えた私は、2年ほど前から個人で講演会活動を始めました。そんな時にマンガ化の話をいただいたのです。
マンガは感情の動きが読み手に伝わりやすく、娯楽としても楽しみながら読むことができる。ヤングケアラーについて広く知っていただくのによい方法だと思ったのです」

マンガでは会社経営している父親と母親は小学校で出会い、なんでもできる母に父がほれ込んで結婚したとある。家は裕福で、母は父の会社の経理を長年引き受けながら、3人の子供たちを育てる、やすひろさん自慢の母だった。だが母に異変が起きた頃は、年の離れた長女はすでに嫁いでおり、多感な時期にあった兄は家族の状況を直視できないでいた。

そんな折、母は会社を辞めさせられた。そのことから「母の異変に一番最初に気づいたのは父ではないか」とやすひろさんは言う。

(c)『48歳で認知症になった母』(漫画:吉田美紀子、原案:美齊津康弘 / KADOKAWA)

母と過ごせる時間が増え、喜ぶやすひろさん。だが認知症は治る見込みはない。事態はさらに悪化していく。ここに描かれているのは、母本人、小学生をはじめとした家族たちが現実とどう向き合っていったのかの重要な記録なのだ。

衝撃の体験を、マンガ試し読みでお届けする。