私たちがなじんでいる「クラシック音楽」は、いつごろの音楽なのか? 意外と知らない音楽の歴史をひもとく
クラシック音楽はお好きですか? 興味はありますか?
「なんとなく気になってはいるんだけど、ちょっとハードルが高いかも......」と悩むあなたに、筋金入りのクラシック通である慶應義塾大学教授・許光俊氏が、クラシックの楽しみ方、意外なトリビア、背景にある歴史などを楽しくお伝えします。
もちろん、すでにクラシックが大好きな方が読んでも、楽しい発見があるはず。
どうぞご堪能あれ。
(本記事は、『はじめてのクラシック音楽』の一部を抜粋、編集したものです)
「クラシック」に含まれる意味とは
まさか、昨日や今日生まれたばかりの作品がクラシック音楽と呼ばれているとは、誰も考えないでしょう。
クラシックという言葉は、英語の辞書を引いてみると、一流の作品、権威ある書物といった意味があります。
一流と見なされたり、権威を認められるためには時間が必要です。長い年月、多くの人々の厳しい目にさらされて生き残らないといけないのです。案外これはたいへんなことです。現代作家が書く小説のいったいいくつが100年後にも読まれるか。ノーベル文学賞を取ったのにほとんど忘れられてしまった作家は、世界中にたくさんいます
名画と呼ばれる映画にしたところで、制作から数十年たった今、若い世代のどれほどが見ていることでしょう。
また、クラシックという言葉には、古典的とか、古代ギリシア・ローマの著作や芸術という意味もあります。近代以降のヨーロッパにおいて、古代地中海世界は憧れの対象であり続けています。つまり、古典的という言葉には、単に古いだけでなく、のちの時代にでも通用するような美や真実が表現されているという意味が含まれているのです。