ユーラシア世界の底が割れ、中国、ロシアは多極化の被害者となる

米国が退いても海千山千の老舗大国が勃興

新年早々、ひび割れの話しから始めよう。ユーラシア大陸は今、かつて地球にあったパンゲア超大陸が割れた時に似て、(政治的な)裂け目からは何千年と溜まりに溜まった、民族間の恨み、憎しみがマグマとなって火を噴きあげている。

親米であれ反米であれ、米国と言う存在がユーラシアを一つにまとめてきたのが、今では巨大な地塊がぶつかり合いながら、様相を猫の目のように変えていく。その様を見てみる。

しっかり残る米国の軍事プレゼンス-中東

米軍が引いたと言っても、それには濃淡がある。

米国は基本的に海洋帝国で陸軍国ではないから、ユーラシアでも海の周縁地域を中心に活動を展開する。内陸部の中央アジアでも「覇権」を求めて悪だくみをしているようなことを言う人もいるが、筆者の経験ではアメリカは、軍事物資などを大量迅速に運び込めないユーラシアの内陸部にコミットするのを嫌う。

カブールからの脱出、2021年8月24日  by Gettyimages

米国は一時、中央アジアへの関与を強めたが、それはアフガニスタンでテロリスト掃討戦を展開する上で、基地、兵站路としての意味を持っていたからだ。アフガニスタンから撤兵した今では、中央アジアへの関心はめっきり減退している。

大陸周縁部のうちでも、既に述べたように、中東地域では米国は関与を弱めてきている。

以前はイスラエル、そして湾岸諸国での石油利権を守るため、イスラエルに莫大な軍事・経済援助を与え、サウジ・アラビア沖のバーレーンに第5艦隊の司令部、カタールに空軍基地を擁して地域の安定、特にサウジ・アラビアの安全に目を配ってきた。

 

現在、米国民主党政権とサウジ・アラビアの関係は一時的に疎遠になっているが、米軍は相変わらずこの地域に駐留し、撤退したはずのシリアにも、北東部に4000名程度の特殊部隊を配置して、同地のクルド系と提携。IS勢力の掃討に当たっている。この兵力があるために、ロシア軍はシリアから引くことができず、またトルコもシリアに越境してクルド族討伐作戦を展開するのを控えている。

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