「中・低所得層」の生活を直撃…10年にわたる「生活必需品の値上がり」のウラで起きていた「スクリューフレーション」の正体

新興国の台頭の背景には、東西冷戦の終結があります。1991年にソヴィエト連邦が崩壊し、旧社会主義の国々が続々と市場経済に参入したのを契機に、先進国の企業は新興国の安い労働力を求め、こぞってグローバル展開していきました。

結果、安い製品が世界中に輸出されることになり、家電やデジタル製品などの値段が下がります。中国が「世界の工場」と言われていた時期です。

一方、新興国にとっては、ずっと貧しかったところに工場が建ち、多くの雇用が生まれ、収入が上がることで暮らし向きが良くなりますから、食料やエネルギーなど生活必需品の需要が高まり、国際的に値段が上がっていきました。

さらに、これら新興諸国が発展し、都市化されるにつれて農地が減っていくことに加えて、脱炭素化やロシアによるウクライナ侵攻の影響などにより、今後とも生活必需品の需要が供給を上回る状態が続くだろうと予想されています。

ブレグジットやトランプ政権につながった

ただ新興国であれば、生活必需品の値段が上がっても経済成長していくのでなんとかなるし、先進国でも高所得者層は支出に占める生活必需品の割合が少ないため影響は小さくて済みます。

生活必需品の価格上昇で最もダメージを受けたのは、先進国の中低所得者層でした。

生産拠点が新興国に移ったことで仕事は減っていくのに、生活必需品の物価は上がっていく。自分たちはスクリューフレーションで締め付けられる一方、自国の経済成長の恩恵は富裕層に集中し、彼らはますます富を増やしていく──こうした労働者たちの反発が、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政権誕生につながっていったのです。

スクリューフレーションがとりわけ日本を直撃しているのはなぜか?【つづき】「日本の物価上昇は「所得格差」と「地域格差」を生む「最悪のインフレ」」でデータを元に明らかにする。