2023.01.26

死後、必要になる「思わぬお金」…「死亡保障」はどう備えたら良い?

ライフスタイルより変わる考え方
寺田 紀代子 プロフィール

おひとり様の死亡保障、残さない整理費用に備える

ここまでは、家族を持つひとの死亡保障についての考え方をお話ししました。

では、単身世帯の死亡保障はどう考えたらいいのでしょうか。

最初に申し上げた通り、生まれたからには100%亡くなることは決まっています。葬儀費用は地域により大きな差があるものの、コロナ前までは全国平均190万円という数字が長く続いていました。コロナ以降、一般葬から家族葬に大きく変化しており、火葬のみを行う直葬も多くなっています。葬儀費用だけを考えると100万円位の準備で一式執り行うことは可能です。葬儀に関しては、親族、信頼できる友人などに意向を伝え、費用は貯蓄、または保険で準備をしておくことが肝要です。

保険で準備する場合、死亡保険金受取人は戸籍上の配偶者または2親等以内の血族に設定することが原則となっています。2親等以内の血族とは父母・祖父母、子・孫、兄弟姉妹です。2親等以内の血族がいない場合は、他の親族に死亡保険金受取人を設定することはできますが、あらかじめ申請が必要ですから注意しましょう。

独身の女性でこのような例がありました。女性は500万円の死亡保障に加入しています。保険契約当初はご両親が健在だったため、受取人は父親でした。父親が亡くなり、母親に受取人を変更しましたが、数年後に母親も他界。実の兄がおり、兄に受取人を変更しました。兄は以前婚姻をしており子どももいましたが、離婚し単身になりました。その後、兄にがんがみつかり、闘病の後他界。結果この女性に2親等以内の血族がいなくなりました。叔父、叔母は他界していましたが、いとこは健在でした。いとこは4親等の血族になり、死亡保険金受取人の原則である2親等以内の血族ではありませんでしたので、保険会社に所定の書類を準備し申請を挙げ、申請が受理され、現在はいとこが死亡保険金受取人となっています。

若いうちは、父母・祖父母・兄弟姉妹などに設定できますが、年を重ねると、親が亡くなり、兄弟姉妹に先立たれることもあり、設定の幅が狭まります。万一の時、せっかくの保険金が宙に浮かないよう、保険担当者や保険会社に相談して確実に役立つようにしておきましょう。受取人が定まらないようでしたら、保険で備えるより、預貯金に準備しておく選択もありかもしれません。

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単身世帯の場合、葬儀費用より準備が大事と思われるのが、身辺の整理費用です。

住まいの形式により費用は異なりますが、賃貸の場合2LDKで10万円程かかります。一軒家ですと大きさにもよりますが50万から100万程遺品整理費用がかかります。遺品業者の目安に表示されているのは、あくまでも基本料金ですから、廃棄するものの量により加算料金がかかる場合もあります。事前に地域に整理業者があるか、どの位の費用がかかるかなど調べておきましょう。

他にも単身世帯では、亡くなった後整理していかなければならないお金のことが、いろいろでてきます。毎月かかる固定費には後払いのものが多く、家賃・光熱費・クレジットカードの精算・携帯料金・各種保険料・月極駐車場の料金・NHK受信料・各種購読料・趣味の月謝などさまざまな料金が発生しています。死後このような事務手続きを誰にしてもらうのか、決めておく必要があります。

自分で把握しておくだけでなく、手続きをしてもらう人にわかりやすいようにするために、エンディングノートを活用し、まとめておきましょう。毎月かかる諸費用、預貯金残高、加入している保険、有価証券の保有残高、ローン残高、借入金があればその詳細も記載しておきましょう。記載することで、亡くなった後必要な金額が見えてきます。特にローンや借入金がある場合は、葬儀費用や身辺整理費用に加えて借入金などの清算費用も併せた金額を、死亡保険金を決める目安にしましょう。

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