テレビ局の採用面接で、就活中の女子大生が訊かれた「ありえない質問」と「その答え」
全国紙初の女性政治部長が克明に記す「男社会」のリアル。
なぜ、永田町と政治メディアにオッサンが多いのか?
幾多の「壁」に直面してきた政治記者が男性優位主義の本丸で考えた、日本社会への処方箋。
*本記事は、佐藤千矢子『オッサンの壁』(講談社現代新書)を抜粋・再編集したものです。

面接での「お茶くみ」質問
1987年に私は新聞記者になった。バブル経済が始まり、女子差別撤廃条約の批准と男女雇用機会均等法の制定から2年がたち、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)という言葉はまだ一般的には使われていなかった時代だ。
この章では、若手・中堅時代の政治記者としての話を中心にオッサン社会について語っていくが、その前に駆け足で就職活動や地方支局時代のことを振り返ってみたい。
「あなた、職場でお茶をいれてくださいと言われたら、どうしますか?」
就職活動(就活)の面接で今どき女子学生にこんな質問をしたら、面接官も会社も一発でアウトだろう。SNS(会員制交流サイト)であっという間に拡散され、女性社員にお茶くみを強要しかねない会社という烙印を押される。
しかし、ほんの一昔前までそんな質問が当たり前の時代があった。今から約35年前、私自身が、あるテレビ局の採用面接で質問されたのだから間違いない。
募集・採用・昇進などで男女差別を禁止する男女雇用機会均等法が施行された翌年、私は毎日新聞社に入社した。いわゆる均等法第1世代にあたる。
若いころはよく、均等法世代の就活の苦労話を聞かせてください、という質問を受けたが、実は私はまともな就職活動をほとんどしていない。冒頭の場面は、少ない経験の一コマだ。
もともと出版社志望で、数社を受けたが、見事に落ちた。ついでと言っては失礼だが、練習を兼ねて、新聞社やテレビ局もいくつか受けたが、受かるはずがない。活動をするうち、どうやら自分に向いているのは新聞社かもしれないと思い直した。
1年間、就職浪人して新聞社を目指そうとマスコミ塾にも通い出した。本格的に勉強をし始めた矢先、毎日新聞社が7月入社の中途採用試験をするのを知り、腕試しのつもりで試験を受けに行き、入社した。
「新聞記者一筋でした」と言えたらさぞかし格好よかったと思うが、そうではない。取材して書く仕事に携わりたいとは思っていたが、新聞記者は権力の監視機関としての役割を担いながら、権力に極めて近い場所にいることに、建前と本音の使い分けのようなものを感じて警戒していたというのが、正直なところだ。その戒めは今も胸の内にある。