2023年最初にSNSが爆発的に盛り上がったドラマは『忍者に結婚は難しい』(フジテレビ系木22:00~)だ。
この作品は、夫の傍若無人と妻の怒りを描いている。主な登場人物は薬剤師をしている草刈蛍(菜々緒)と郵便局員の悟郎(鈴木伸之)。2人は結婚2年半の夫婦で、最初はラブラブだった。しかし、生活習慣や価値観の違いから言い争うようになり、すでに離婚の危機に直面していた……。

大好きなキャンプで出会い、結婚したふたりだったが… 写真/フジテレビ

実は、蛍と悟郎はお互いに明かせない“裏の顔”がある。蛍は甲賀忍者、悟郎は伊賀忍者なのだ。戦国時代より歴史の裏舞台で敵対を続けてきたライバルの末裔同士が気付かずに結婚してしまったのだ。

原作である同名小説『忍者に結婚は難しい』は「ユーモア小説の魔術師」と異名をとる小説家・横関大さん。その他のヒット作に『ルパンの娘』や『K2 池袋署刑事課 神崎・黒木』がある。
初回が放送されるとすぐに、「#忍者に結婚は難しい」のハッシュタグとともに、鈴木伸之さん演じるダメ夫に対し、Twitter上で多くの強烈な批判があげられ、女性達の共感を集めている。そこで、現代の夫婦問題に詳しいライターの沢木文さんに、ドラマ『忍者に結婚は難しい』の魅力と沢木さんが取材した「クズ夫」エピソードをいただく。
以下、沢木さんの解説です。

 

悟郎の中に根深く残る「男尊女卑的役割分担」

『忍者に結婚は難しい』は、甲賀忍者・蛍(菜々緒)と伊賀忍者・悟郎(鈴木伸之)が主人公。この、消えたはずの忍者一族は、令和の今も人知れず暗躍しているという設定です。
妻の蛍が所属する甲賀は少数精鋭の実力派集団で、麻酔銃やドローンなど最新の設備を活用。一方、夫の悟郎が所属する伊賀は、手裏剣術などの古き伝統を守りつつ郵便局ネットワーク使い、古式ゆかしい方法で任務を遂行していく。

物語に描かれるのは、手裏剣は使うけれど、ファッションなどは今どきの「現代の忍者」だ Photo by iStock

取材をしていると、妻がベンチャーやIT関連企業など先進的な会社でフレキシブルに働き、夫が財閥系企業や金融関連などという夫婦が多いことに気付きます。やはり、伝統的な企業は男性比率が高い。それは“男の社会”だからでしょう。
この、「妻が甲賀、夫が伊賀」というのは、現代夫婦それぞれの職業的バックグラウンドとしても、シンクロする部分が多いようにも感じます。
そして、この作品の魅力の神髄は、悟郎の中に根深く残る「男尊女卑的役割分担」。妻とはこうあるべきという考えが、言動の随所に見えている。しかもそれに対して全く意識をしていません。

番組の公式サイトを見ると、蛍の設定に「(普段は)穏やかで物静かな立ち振る舞いだが、それは正体がばれないようにおとなしく忍んでいる表向きの姿。実は人一倍気が強く、完璧主義で失敗や負けることが嫌いで、時々、本音の毒舌が漏れ出てしまう」とあります。
これに共感する女性も多いはず。なぜなら女性は「物静かで寛容であれ」という暗黙の圧力を家庭も含めた社会から受けているからです。