「ドラマ『忍者に結婚は難しい』の魅力の神髄は、主人公のひとりである夫の悟郎の中に根深く残る“男尊女卑的役割分担”。妻とはこうあるべきという考えが、言動の随所に見えている。しかもそれに対して全く意識をしていません」

こう語る、『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』『沼にはまる人々』などの著書を持つ沢木文さんは、様々な夫婦の形も見てきた。沢木さん曰く、1月5日からスタートしたドラマ『忍者に結婚は難しい』(フジテレビ系木曜22時~)を見た人たちがSNSで爆発的に盛り上がった理由は、多くの人がモヤモヤと感じている問題がコメディタッチで描かれているからだという。シリアスにも描きうるクズ夫エピソードを、明るく「ふざけんな!」と言えることも魅力ひとつだというのだ。

コメディタッチのドラマゆえ、SNSでも「ふざけんな!」と盛り上がるのかもしれない 写真/フジテレビ

菜々緒さんが演じる妻・蛍への抑圧、蛍の忍耐と完璧主義、鈴木伸之さん演じる夫・悟郎のおおらかさと鈍感さという設定も、現代に生きる私たちに“あるある”と思わせるのだ。
そんな沢木さんに、盛り上がる理由を分析していただき、実際の体験談を共有いただく第1回の後編。

前編で、沢木さんは「マイクロアグレッション」という言葉を紹介してくれた。

“多様化の今、1970年に提唱された『マイクロアグレッション』が注目を集めています。日本語では『小さな攻撃』となり、明らかな差別に見えなくても、ジェンダーや人種などのステレオタイプや偏見による発言や行動を指します。
家事や育児や介護は女の仕事と無意識に思い込み、自分が正義だと思っている人は多く、家庭内こそ、マイクロアグレッションの温床。これに辟易した妻が離婚を考え始めるというのもよくある話。“

家庭内はマイクロアグレッションの温床……なんとも恐ろしい話だ。そして「トイレを汚す問題」の実例も紹介。後編では沢木さんに「食事編」の実例をご紹介いただこう。

トイレは「立ってするか座ってするか論争」も勃発。でもどうしても立ってやりたいのなら、トイレを汚した人が掃除することで終わるはず。つまりは「立ってしたいけど汚したのは誰かに掃除してほしい」からムカつくのだ! Photo by iStock
 

レトルトは手抜きなの? 妻が用意した夕飯を拒否する夫

『忍者に結婚は難しい』のドラマ内で、妻・蛍が用意したレトルトカレーの夕食を夫・悟郎は手抜きだと感じ、「食欲がない」と拒否するシーンがありました。
これに対してSNSでは「私なら夫にカレーを投げつけて離婚する」などの声が続々と。皆が同じような経験をしているからこそ、盛り上がる。レトルト、冷凍食品、スーパーの総菜……妻に家事を丸投げしているくせに文句を言う。この食事問題が夫婦の亀裂の原因になることも。

「専業主婦の義母に育てられた夫は、レトルトも冷凍食品も大嫌い。平日の夜はすぐに食事ができるように作り置きをしているのですが、“これって、2日目でしょ?腐ってないの?”といちいちニオイを嗅いでから口に運ぶんです。そのほかはいい夫なだけに、残念」(36歳・会社員)

「プロポーズの言葉は“毎朝、君のみそ汁が食べたい”。結婚当初はよかったのですが、もう4年も毎朝、だしにこだわる夫のために昆布と花かつおで作るうちに、離婚の決意が固まってきました。一度、顆粒だしを使ったら“変な味”と残されたんですよね。あの時に、離婚届をもらってきたこと、夫は知りません」(33歳・契約社員)

出汁からとった美味しいお味噌汁、もちろん素晴らしいけど Photo by iStock

“飯がまずい”と私が作ったご飯を残すのもムカつきます。結婚2年目の夫は食通。火が通りすぎた肉や野菜は残すし、これ見よがしに塩やしょうゆをかけて“これで食べられるようになった”などと言う。美味しいお店に連れて行ってくれるのはいんですけれど」(34歳・派遣社員)