1月13日(金)に公開される、映画『そして僕は途方に暮れる』は、多かれ少なかれ、多くの人間が抱いている「逃げたい」という欲求を実現させた男の物語だ。藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)さん扮する主人公・菅原裕一は、他愛もない理由から、恋人、親友、先輩や後輩、家族らの関係を断ち切ってしまう。そんなどうしようもない、だが、根は悪くない(と思われる)裕一の恋人・里美役を演じた前田敦子さん、姉・香役を演じた香里奈さんによる対談が実現。後編では、おふたりの人との付き合い方について語ってもらった。

クズ男は監督本人を投影していた?
──目の前の面倒なことから逃げまくる裕一。5年付き合ってどうしようもない裕一の現状からなんとなく目を背けていた里美、そんな裕一に怒ったり面白がったりする周辺の人たち。おふたりは対談の前編で「登場人物がリアルなんだよね」とおっしゃっていましたが、「リアル」という言葉は、じつはこの作品の隠れたキーワードのような気がします。
前田 本当にいろいろなリアルが描かれていますよね。それぞれの登場人物が、すぐ近くに実在するような人たちで、(三浦大輔)監督が人間観察をしながら、緻密に丁寧に書いた脚本だなということを、里美を演じながら改めて実感しました。そして、私、監督は、ご自身を裕一に重ねてこの作品を書いたと思っているんです。だから、監督が逃げたくなるような女の子ではなく、監督が安心していられる、やさしい彼女でいようと思って演じました。
香里奈 舞台のときもそんな感じだったの?
前田 そう、(裕一役の)藤ヶ谷くんに合わせてぼそぼそと裕一のせりふをしゃべったりしてた(笑)。映画の現場でも、モニター前で藤ヶ谷くんの息遣いに合わせて、息遣いしたりね……。
香里奈 やってた!

──監督がご自身を投影したと思われる(笑)裕一はどうしようもない「クズ男」ですが、物語が進むにつれ、「逃げたい」という欲望は誰にでもあるし、一歩間違えると裕一のような状況に陥る可能性は、誰にでもありうるのではないかと思いました。そして、「クズ男」ではあるのですが、だんだんとかわいく思えてくるというか。
香里奈 そうなんですよ。(裕一には)愛嬌はあるし、彼なりに頑張ろうとはしているんです。ただ何をどう頑張っていいかがわからない。たぶん自分のどこが悪いのかもわかっていないと思うんです(笑)。
前田 さまざまな経験を通して、彼も成長しているんですよね。ただ、変わった自分を見せるのが恥ずかしいんだと思います。必死で、変わった自分を人に見せる恥ずかしさと戦っている。「変わったじゃん」と言われているのがくすぐったいんでしょうね。
香里奈 素直な人なんだろうね。そこが憎めないというか、そもそも悪気があって逃げているわけじゃないしね。
