ドイツの大晦日に起こった「ロケット花火暴動」が示す“移民受け入れ模範国”の残念な末路
新年を祝うロケット花火が武器に
大晦日にドイツで起こった暴動紛いの事件が、ドイツでは深刻な社会問題として尾を引いているが、日本で一切ニュースにならなかったのが不思議だ。
ドイツでは、日本のお正月に相当するのはクリスマスで、新年には新しい年の始まりという以外に大して意味はない。だから、家族で集まるクリスマスとは違って、ニューイヤーズイブである大晦日の夜はパーティーの時間。たいていは仲間うちでワイワイ騒ぐ。
カウントダウンが近づくと、特に男性陣が張り切り、庭や道路に空瓶を並べて、ロケット花火の打ち上げ準備に興じる。その後、厚いコートを着込んだ残りのメンバーが、シャンペンのグラス片手にぞろぞろと出てきて待機。零時の時報と共にヒューッ、パンパン!が始まり、夜空が赤や緑に染まり、気がついた頃には辺り一帯が火薬臭くなってくる。

その喧騒の中、少々酩酊しながらご近所さんのところにも足を伸ばし、ハッピーニューイヤーと言いながらハグやら乾杯をするのが、ドイツ国民の正しい新年の祝い方だ。
打ち上げ花火の販売は、1年のうち12月29日から31日のたった3日間しか認められていない。しかし、普段、倹約家のドイツ人が、こと花火にかけてはやけに気前が良く、この3日間の売り上げだけで100万ユーロ近いと言われる。
ただ、このとき発売されるロケット花火の多くは本格的なもので、非常に高温になり、扱い方によってはかなり危険だ。だから、大晦日には救急隊が増強され、零時を10分も過ぎると、火傷やボヤで、救急車や消防車のサイレンが聞こえ始める。
21年と22年の新年は、コロナのせいでこのお祭り騒ぎができず、ようやく元に戻った今回、皆の喜びはひときわ大きかった。
私は、今年の新年はヘッセン州で迎えたが、近所の人たちの花火をめぐる大団円も逐一見ることができた。しかし、散々、打ち上げを堪能した後、人々は花火のカスを全て片付けたらしく、翌朝、辺りはスッキリ整然とした街並みに戻っていた。新年早々、ドイツ社会の良い面を見たようで、清々しい気分になった。
ところが、この夜、ドイツの一部の地域では、そのロケット花火が武器に変わっていた。危険なロケット花火は、警官や救急隊を目掛けて発射され、暗闇の中では、火をかけられた車やバスや、道の真ん中に引き摺り出された大型のゴミのコンテナがメラメラと燃え盛っていた。
私はドイツに40年住んでいるが、大晦日のパーティーがここまで脱線したのは初めてだった。