提供:マザーレイクゴールズ(MLGs)推進委員会

日本が誇る、最大かつ最古の湖、琵琶湖。そんな貴重な湖を有する滋賀県では、琵琶湖の環境を守り、湖に根ざした暮らしを目指す、未来へ向けた独自の取り組みをしています。滋賀県発の琵琶湖版SDGs「マザーレイクゴールズ=MLGs」とは?

琵琶湖と人が共生する姿を目指す
滋賀県独自のSDGsへの取り組み

MLGsは、琵琶湖版のSDGsとして、2030年の環境と経済・社会活動をつなぐ健全な循環の構築に向け、琵琶湖を切り口として独自に13のゴールを設定。琵琶湖を中央に、周囲に13のゴールカラーを配置。琵琶湖を取り巻く湖国・滋賀、そして地球を表現したロゴマークが目印。

滋賀県にある、日本最大の面積と貯水量を持つ湖「琵琶湖」。世界でも有数の古代湖であり、その起源は440万年前まで遡るといわれ、長い時間をかけ琵琶湖のなかで独自の進化を遂げた生き物が生息し、60種を超える固有種を誇っている。貴重な自然環境を育み、近畿圏約1450万人の生活や産業の発展に欠かすことができない国民的資産であり、まさに母なる湖といえる。

そんな日本が誇る湖を有する滋賀県は、「自分たちの環境は自分たちで守ろうとする“自治”と、県民と行政が協力しながらそれを達成しようとする“連携”の精神」で、湖を守る独自の取り組みを進めている。その先駆けとして「せっけん運動」(碧い琵琶湖を取り戻すために県民が立ち上がり、粉せっけんの使用を推し進めた環境運動)が50年ほど前に立ち上がり、自分たちで琵琶湖を守ろうという自治の精神は今に引き継がれている。

そして2021年、琵琶湖版SDGs「マザーレイクゴールズ(MLGs)」が立ち上げられた。ワークショップやキャンペーンを重ね、何度もバージョンアップを繰り返してできあがった「MLGs」は、琵琶湖に関わり、琵琶湖を愛する人たちが、琵琶湖に根ざす暮らしの今と未来を見据えて作り上げた、人々の総意と琵琶湖愛の結晶。それは「自然と人との共生とは何か」を根源から問い直す、世界の人々にとっての普遍的な命題であり、自分ごとなのだ。

「MLGs」では、琵琶湖や環境、自分たちの暮らしの目指すべき方向性や具体的な目標を13のゴールで示し、それらの達成に向けてさまざまな活動に取り組んでいる。さらに、「状態」と「傾向」の2つの側面から、それぞれの分野に精通した専門家による評価を行い、各ゴールの達成を目指すだけでなく、互いに影響し合う関係性を見極め、課題を導き出し、琵琶湖を取り巻くすべての環境、健全な循環に向けたアクションを起こしている。2030年に向けて、誰一人取り残さない持続可能な社会をつくるために、一人ひとりができることを、琵琶湖と共に考えよう。

琵琶湖に根ざす暮らしに向けた
13のゴールと現在の取り組み

「せっけん運動」以来、水質を改善し美しい水を実現することは、琵琶湖に関わる活動の求心力。満々と清らかな水を湛える琵琶湖は人々を魅了し、いろいろな行動を起こすきっかけとなっている。水の清らかさは長期的に改善しており、いまは高度経済成長期前と同レベルの水質に。アオコや赤潮などのプランクトンの異常発生が抑制され、飲料水としても問題がなく、思わず触れたくなるような清らかな水を維持していく。

縄文時代にはすでに漁業が行われていたと考えられている琵琶湖。近年、琵琶湖漁業の漁獲量は大きく減少しており、ホンモロコなどに増加の兆しがみられるものの、依然、低水準。環境を「守り」そして「活かす」新たな好循環を生み出し、琵琶湖の豊かな魚介類を取り戻す。在来魚介類の生息環境が改善し、資源量・漁獲量が持続可能な形で増加するとともに、人々が湖魚料理を日常的に楽しめる暮らしを目指す。

琵琶湖に関わる生き物は、魚介類だけではない。多くの動植物が湖、川、里や森に生き、複雑に関わりあって生態系を作っている。直接私たちが食べたり、利用したりしない生き物であっても、それがいなくなったら回り回って生態系に大きな影響を与えることもあり得る。生物多様性や生態系のバランスを取り戻す取り組みを拡大し、野生生物の生息状況の改善を目指すとともに、自然の恵みを実感する人を増やしていく。

海洋プラスチック汚染の問題を契機として、琵琶湖においてもマイクロプラスチックの増加防止という新たな課題が生じている。滋賀県でのポイ捨てがなくなりごみの量が減れば、琵琶湖のごみもゼロになる。また水草帯は、琵琶湖の生態系を形づくる重要な構成要素の一つ。川や湖にごみがなく、砂浜や水生植物などが適切に維持・管理され、誰もが美しいと感じられる水辺景観を守っていく。

森林は、琵琶湖の水源として重要な役割を果たし、土砂の流出を防ぐことで人々の暮らしを守ってくれている。林業をはじめとした山の生業が成り立たなくなると、森林が荒廃し、土砂流出防止や水源涵養などの機能が発揮できなくなる。水源涵養や生態系保全、木材生産、レクリエーションなどの多面的機能が持続的に発揮される森林づくりを進め、人々が地元の森林の恵みを持続的に享受していく。

森、川、人里、そして琵琶湖は一つの連なりとして存在し、水とともにあらゆる物質がその中を循環している。「森川里湖海」を提唱し、森から湖、海に至る水や物質のつながりが健全に保たれ、湖と川、内湖、田んぼなどを行き来する生き物が増加する姿を目指す。水田と周辺環境の連続性や生き物の生息空間を確保する取り組みとして、「魚のゆりかご水田」など豊かな生きものを育む水田づくりが進められている。

気候変動による影響が表れて、琵琶湖の水温は上昇傾向にある。例年冬に北湖で見られる全層循環が2018年度冬季に観測史上初めて確認できず、さらに翌年度も確認できなかったことは、琵琶湖の環境保全が地球規模の温暖化対策と不可分であることを示している。日常生活や事業活動から排出される温室効果ガスを減らす取り組みを広げ、琵琶湖の全層循環未完了などの異変の進行を抑えていく。

豪雨や渇水、温暖化などの影響を把握・予測し、そうした事態が起きても大きな被害を受けない暮らしへの転換を進める。そして災害の発生を前提とした生活として、気候変動に強い農産物の生産拡大を考えるなど、気候変動による影響にあらかじめ備える適応策が必要。温暖化対応品種として育成された滋賀県の水稲品種「みずかがみ」の作付けが拡大しており、さらに高温耐性に優れた品種も県内で開発中。

地域の自然の恵みを活かした商品や製品、サービスが積極的に選ばれ、地域内における経済循環を活性化させることで、環境を持続的に守っていく。地域の人材、人と人とのつながり、文化といった地域の資源を活用した産業は、地域の経済循環を活性化するだけでなく、製造や輸送による二酸化炭素排出量を削減する意味でも重要。また、滋賀県の地の利を活かした、環境問題の解決に寄与する技術開発も望まれる。

1983年以降、滋賀県で小学5年生を過ごした世代が、学習船「うみのこ」で琵琶湖の環境を学習し、湖上での経験を共有していることは、滋賀県にとって大きな財産。近年は、森林環境学習「やまのこ」、農業体験学習「たんぼのこ」も始まっている。琵琶湖や流域、自分が生活する地域を環境学習のフィールドとして体験・実践する機会が豊富に提供され、関心を行動に結びつけられる人を増やしていく。

琵琶湖は楽しむ場としても魅力的な場所。コロナ禍以降、アウトドア志向の観光が増え、特にキャンプは冬季でも増加している。一方で、プレジャーボートによる騒音被害に関する苦情も増え、琵琶湖への愛着心を高めるためにも地域住民が利用者を快く受け入れられる環境づくりも必要。レジャーやエコツーリズムなどを通じて自然を楽しむさまざまな機会を増やし、琵琶湖への愛着を育んでいく。

琵琶湖に臨んで建立された多くの寺社、水と共生する人々の暮らし、ふなずしなどの独自の食文化、エリ漁などの伝統漁法といった「水の文化」の歴史が、琵琶湖周辺には集積されている。また、洪水から暮らしを守る知恵が地域の伝統や祭礼として継承されていることも少なくない。水を敬い、水を巧みに生活の中に取り込む文化、水が育む生業や食文化を、将来世代へ継承していく。

琵琶湖をめぐってはさまざまな利害関係が存在し、流域ごと、上下流、川の右岸と左岸など、水をめぐっての地域間対立と調整が、琵琶湖淀川流域の歴史を作ってきた。年代や性別、所属、経験、価値観などが異なる人同士、また異なる地域に住まう人同士がつながり、琵琶湖や流域の現状、これからについて対話を積み重ねることが大切。そうした対話と成果を共有する機会を増やしていく。


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マザーレイクゴールズ(MLGs)推進委員会


●情報は、FRaU2023年1月号発売時点のものです。
Text & Edit:Chisa Nishinoiri