生活が苦しい人でも「格差を肯定」してしまうのはなぜか? じつは、人間の「心のクセ」が深く関係していた
自分でも気づきにくい、ある場面でうっかりやってしまう、ものの考え方や行動ってありますよね。そうした「心のクセ」が他人との関係性をギクシャクさせたり、思い違いや行き違いを生じさせたりすることがあります。
そんな「心のクセ」を社会心理学の観点から解説した、『「心のクセ」に気づくには』(ちくまプリマー新書)から、「格差に関する心のクセ」について紹介します。
生まれたときからの格差
現代社会における問題としての「格差」について社会心理学の観点から考えていきます。競争がある分野において成功を収めるにあたって、多くの人が重要だと考える要因は、その分野に関連する能力の高さや努力の量でしょう。
勉強やスポーツには多くの場合、競争が存在します。能力の高さや努力の量は、学力偏差値やスポーツのランキングなどの結果に反映され、そこに序列が生まれます。上位と下位の差や違いを「格差」と呼びます。
私たちの社会には、能力の高さや努力の程度とまったく無関係に、生まれた時点で上位―下位の地位が決まってしまう、社会集団間の競争関係が存在します。そして、そのような社会集団間の関係性には、貧富の序列が存在し、経済的な格差を生じさせます。
白人や黒人といった人種、男性、女性といった性別はその典型例です。アメリカ社会では、白人は社会階層の中では高地位に、黒人は低地位に位置します。連邦準備銀行の2019年の調査結果を紹介したCNNの記事によると、黒人世帯の純資産は、白人世帯の約8分の1です。相続資産が少なく、持ち家率も低く、経済格差の存在がデータで確認できます。
性別に関しては、家父長制度や、そのような意識が浸透している社会においては、男性が高地位、女性が低地位になります。日本社会では、女性の管理職の割合が低いことから男女の賃金格差が大きいとされており、2020年のOECDのデータによると加盟国ではワースト3位です。