かわいらしい黒と白の“点”たちが、観覧車やハンバーガーを生み出す。
しかし実は、片方のページの点たちは豊かな暮らしをしていて、もう片方のページの点たちは、貧しい生活をしている。
では「点と点」はどうしたら全員が幸せになれるだろう――。

『DOTS』という世界中でベストセラーになっている一冊は、黒の点と白の点「だけ」で描かれた絵本だ。それでいて、思いやりとは何か、共助とは何か、そして、孤独を通じて感じる「人の手の温かさ」を教えてくれる。

日本に上陸し『点 きみとぼくはここにいる』という邦題で刊行された本書を翻訳したのは、内田也哉子さん。1冊を日本語として私たちに伝えてくれた内田さんが、ご自身の経験と重ね、点と点、人と人とのつながりについて語ってくださったインタビューの前編では、日本国内で感じた「壁」と新しい気づきについて語っていただいた。
後編では。幼少の頃から国内外で多くの人と交わってきた内田さんが率直に思ったことをお聞きしていく。

 

エジプトで見た様々な暮らし

この小・中学校時代の経験に限らず、内田さんは幼い頃から一人色の違う“点”として、様々な環境に身を置くことが多かった。そのことも、「決めつけずに1日だけ行ってみよう」という行動力につながったのかもしれないと語る。

「10歳ぐらいのときに、母がドキュメンタリー番組の撮影でエジプトに行ったんです。そのとき私もついて行って、結果、母と一緒に番組に出ちゃったんですけど(笑)。その旅の中で一番覚えているのは、母が私に見せてくれたエジプトの人たちの暮らし。ピラミッドからスフィンクスから博物館から、有名どころを一通り見せてくれて、それはもちろん素晴らしかったんですけど、母は『この子にエジプトの人の普通の暮らしを見せたい』と、スタッフの方にリクエストしてくれて。それである程度裕福なおうちと、一般的なエジプトのおうち、それに少し都会から離れた水道も電気もない、土で作ったほら穴みたいなおうちなど、様々な暮らしを見せてもらったんです。

私は本当に恵まれていて。そんな、なかなか経験できないようシチュエーションに遭遇できて無意識に感じたのは、場所が変わっても日々の暮らしや大切にするところにはあまり違いがないということでした。移民問題も、私たちの知らない『あっちの国のことね』とヒトゴトになってしまいガチですが、でも実際に一人でもその国の人を知っていたら一気に親密感が生まれる、そういうことってありません? 

息子の学校にウクライナ人の生徒がいるんですけど、それまでは『ウクライナってどういう国?』と思っていたのが、一人顔を見られて話ができる存在が生活の中にいると、ウクライナの人たちのことを他人とは思えなくなるというか。そのぐらいシンプルな感覚が人間にはあるんだということを、幼いながらに何となくそのエジプト旅行で感じ取ったんですよね」