家族が一緒に暮らしていると、ついつい争いになることは多々ある。
にしおかすみこさんは、2020年6月、実家に久々に帰ったときにゴミ屋敷のような実家と明らかに変化した母の姿を見て同居を決意した。それから家族のちょっとした喧嘩は毎日のように聞いてきたという(しかも朝にしおかさんの部屋の前で行われることが多いのだ)。

80歳認知症の母、47歳ダウン症の姉、81歳酔っぱらいの父、そして当時45歳のにしおかすみこさんと始まった同居生活は「ポンコツ一家」という連載に伝えられ、連載13回に書き下ろし5編を加えた書籍が1月18日に発売となった。

そのあとがきにもあるが、書籍が発売となっても、「生活」は続いている。
その生活を綴っていく連載17回は、2021年1月の事件についてお伝えしている。
前編では、「ドロボー!」という叫び声で目が覚めたにしおかさんがダウン症の姉と認知症の母とやり取りする中、別の「ドロボー」事件が発覚するまでをお伝えした。お姉さんの貯金箱からお金がなくなってしまったのだ。

居間で「ないの、ドロボーなの」とベソをかいている姉、「パパクソめ、お姉ちゃんが作業所の公園清掃で貯めた、僅かなお金まで持ち出しやがって。可哀想に。貯金箱がすっからかんだよ!」と語る母を前に、にしおかさんはどうするのか。

写真提供/にしおかすみこ
 

「これで元通りにしよう」

財布からありったけの小銭と千円札を2枚出す。
「これくらいだった? これで元通りにしよう」と姉に渡す。

「すみちゃん、ありがとう、ほんとにありがとう」と深々とお辞儀を繰り返し、満たされた貯金箱をシェイカーのように、シャカシャカ振っては目を瞑り、その音に酔いしれた顔をする。気取ったバーテンダーか……と済まそうとするも…やめてよ。姉妹で。何度も頭を下げないで。なんだか悲しくなるよ。

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母の財布を探す。座椅子にペチャンコになったセーターが数枚、座布団のように敷かれている。めくっていくと出てきた。
「ばか! せっかくとられないように隠したんだよ! もとに戻して!」
もう忘れたか。仕方がないのだが……ありがとうの度合い。2人あわせて2で割れないだろうか。

しんしんと雪が降り続く。積もりそうだ。

各々が寝床に入り、静まり返った23時過ぎ。父が帰宅。
ガチャガチャと鍵を開ける、傘をバサバサと振り雪を落とす、電気をつけようと壁のスイッチをぶっ叩く、冷蔵庫を開ける、チンとレンジで温める……全てバン! バン!っといらない音がたつ。酔っ払いのすることだ。女3人寝たふりを決め込む。