ジャーナリスト島沢優子さんは長く教育の現場を取材してきた。そして様々な親の「病」も見てきた。『スポーツ毒親 なぜ暴力・性虐待にわが子を差し出すのか』では、「子どものため」「良かれと思って」子どもへの体罰を助長してしまう親たちの姿も綴っている。

そんな島沢さんが最近手がけたのが、小児脳科学者・成田奈緒子さんの『高学歴親という病』。スポーツの現場でなくとも、子どもの成長に悪影響を及ぼす行為を「良かれと思って」やってしまう親たちの姿や対策について、脳の専門家が伝える書籍だ。

この本に出てくる「オレオレ詐欺はあってもワタシワタシ詐欺はない」現実について、島沢さんが教育現場に取材。共依存に生じている性差についてお伝えする。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」これまでの記事はこちら
 

「男の子をダメにするのが実は母親」というケースが

もうすぐ定年を迎える中学校の先生(女性)が、ため息まじりに言った。

「男の子をダメにするのって、実はお母さんって言うケースは結構あるんだよね」

ある年の受験期。ある男子生徒が「(公立)高校受験はあきらめて、私立の推薦にします」と言いに来た。成績は中の上。志望するA高校は実力より少し高めだったが届かないわけではない。ただ、その生徒は内申点が高く、彼が名前を挙げた私大の附属高Bなら推薦は確実に通るとみられた。

「自分で決めたのなら、それでもいいよ。でも、なんであきらめるの?A高チャレンジしてみればいいのに」

がそう話すと、生徒は慌てて「あ、すみません。別にあきらめたんじゃなくて、あの……B高ならサッカー部もまあまあ強いし、そっちのほうがいいかなと思ったんです」と訂正した。

生徒が「挑戦しない」と決めたのか…? Photo by iStock

先生は、生徒の嘘を見破っていた。

「その子は、お母さんが、不安が強くてね。模試の点が一時期落ちたとき、体調を崩して病院通いしてたの。B高の推薦でいけないでしょうか?ってお母さんは言ってました。私たちとしては、高校受験はある意味集団競技だと考えているのでみんなで突破してほしいのですが」

生徒の小学6年時の担任と小中交流イベントの際に生徒の話をしたら、母親は息子への干渉が過度に見られた。同じクラスにしてほしくない子どもの名前を挙げたり、学校でちょっとした子ども同士の衝突があると「蹴られた背中がまだ痛いと言っている」とクレームが来た。何人もの児童の親が子どもを連れ菓子折り持参で謝罪していた。小学校の担任が子ども同士に任せませんかと促しても「子どもを守るのが私の役目ですから」と言われたと聞いた。

「女の子の親御さんにも干渉しすぎかな?って思わせるお母さんはいるんだけど、やっぱり男の子のお母さんのほうに断然過干渉が多い。期待しちゃうのかなあ」

先生は、冒頭の男子生徒に「附属の私大にエスカレーターで行かずに、もっと上を目指してね。君ならできるからね」と言ってから単願への切り替えを了解した。ただ、これまで同じことを伝えた男子生徒たちは「私の知る限り、ほぼ全員そのまま附属大学へ進みましたね」と少し残念そうだった。