あるいは、共用部分の劣化・破損状況であるとか、長期的には管理費・修繕積立金の大幅値上げが不可避であるなど、先行き不安を増幅させる報告もある。こうした情報の一つひとつが、この物件にずっと住み続けてよいか、あるいはいずれ売却し引っ越してしまったほうがよいかを考える判断材料となりうるのだ。
やや大げさな言い方をすれば、「情報を制する者はマンション生活を制する」。先ほど、宝の山と呼んだ意味がお分かりいただけただろうか。
理事長権限があれば、好きなように情報収集できる
ちなみにこうした情報の収集は、なにも受動的な方法に限られない。この物件に住み続けていいのかという問題意識から、知りたいこと、気になることが出てきたとき、自分が理事長の立場にいれば、積極的に情報が入手しやすいのだ。
理事長は月1回程度の理事会でしか顔を合わさない他の役職よりも管理会社との接点が多いので、管理スタッフとの距離が自然と近くなり、彼らにいろいろなことを気軽に尋ねられるようになる。

なにより管理会社スタッフは、様々な居住用不動産物件を見ているプロである。「この物件の理事会や管理の状況、他物件と比較してどう思いますか」「将来的に問題になりそうなところを教えてほしい」「最近、引っ越しが多いみたいだけど売買が盛んな市況なんですかね」「うちのマンションをどういう理由で転出していくか聞いていますか」などなど。そんな質問、ただの区分所有者なら管理会社に尋ねる機会などないだろう。
しかも、理事長の権限はマンション管理の全般に及び、役職の範囲が限られた副理事長や、他の理事のような担当分けがない分、職務の範囲外のことを聞くのが憚られ、調べにくいという問題は生じない。その気になれば、理事会役員に根回しした上で、区分所有者へのアンケートを実施することさえ可能だ。