2023.01.25

特捜部が手掛けた事件が「ほぼ100%有罪」になる“からくり”を暴く…!【東京医大「不正入試」事件】

東京医大「不正入試」事件において、唯一の物的証拠が4被告のうち3人が同席した会食の隠し撮り音声データだった。だが、それをどう分析しても有罪にまで持ち込むのは難しかった。そこで贈賄側とされた東京医大理事長と学長から強引に自白を取り、検察に都合のいい調書を作成。それでも足りない部分は、裁判所が検察側が有利になるように「推認」してくれる。特捜検察が手掛けた事件がほぼ100%有罪になるからくりを暴く、連載第4回。    『東京医大「不正入試」事件』(4)前編

隠し撮りされていた会食での会話

2017年10月末、東京地検特捜部は文部科学省科学技術・学術政策局長(役職は当時、以下同)の佐野太被告に関する資料の提供を受ける。それは約半年前の同年5月10日に東京・愛宕の精進料理店『醍醐』で行われた、同省大臣官房長の佐野被告と、東京医科大学理事長の臼井正彦被告の会食の模様を録音した音声データだった。

のちに「第2次醍醐会食」と呼ばれるこの会食は、両被告と親しいコンサルティング会社役員の谷口浩司被告が、臼井被告から頼まれて設定したもので、同席した谷口被告は備忘のために佐野、臼井両被告に無断でその模様を隠し録りし、音声データにして社内で保管していた。それが谷口被告の与り知らないところで、同被告の周辺から特捜部に提供されたのである。

特捜部はその約9ヵ月後、東京医大事件の唯一の物的証拠である、この音声データの内容と、身柄を拘束しない任意の状態で取り調べた臼井被告と東京医大学長の鈴木衞被告らの供述内容にもとづき、佐野被告を受託収賄罪、谷口被告を同幇助罪、臼井被告と鈴木被告を贈賄罪で起訴した。

だがその立件に向けた特捜部のシナリオは、逮捕・起訴されたくない一心で検事の強引な取り調べに迎合した臼井被告と鈴木被告の検面調書の内容にその多くを依存する、極めて脆弱なものだった。

意に反して起訴された両被告が、それまでの供述内容を翻して完全否認に転じたことで、公判では特捜部のシナリオの矛盾点が次々と噴出。東京地裁のエリート裁判官である西野吾一裁判長が「推認」を連発して有罪にしなければ、東京地検特捜部が自ら手掛けた事件で敗北を喫する危険さえあった。

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