2023.01.25

「合格ラインに30点足りなくても…」 東京医大「不正入試」事件、東京地裁の「推認判決」の中身

東京医大「不正入試」事件において、唯一の物的証拠が4被告のうち3人(文部科学省科学技術・学術政策局長《役職は当時、以下同》の佐野太被告、東京医科大学理事長の臼井正彦被告、両被告と親しいコンサルティング会社役員の谷口浩司被告)が同席した会食の隠し撮り音声データだった。

だが、のちに「第2次醍醐会食」と呼ばれるこの会食の音声データをどう分析しても有罪にまで持ち込むのは難しかった。そこで贈賄側とされた東京医大理事長と学長から強引に自白を取り、検察に都合のいい調書を作成。それでも足りない部分は、裁判所が検察側が有利になるように「推認」してくれる。特捜検察が手掛けた事件がほぼ100%有罪になるからくりを暴く、連載第4回。
                   『東京医大「不正入試」事件』(4)後編

次男の東京医大進学も、正規合格も偶然の産物

そもそもこの第2次醍醐会食は、佐野被告の次男で、1浪の賢次(仮名)が東京医大を受験する9ヵ月も前の出来事であり、賢次が翌年に同大を受験するか否か、その時点では何一つ決まっていなかった。

しかも賢次の第1志望校は現役時代から、私立大医学部(医科大)「御三家」とされる東京慈恵会医科大学で一貫していた。

だが残念ながら慈恵医大が不合格となったため、合格した3校の中から東京医大を選択した。要するに賢次が東京医大に入学したのは、偶然の産物に過ぎなかった。

偶然の産物は他にもある。東京医大の18年度一般入試の第1次試験で、臼井被告から一方的に10点を加算されていた賢次が、定員割れを補うための「補欠繰り上げ合格」ではなく、初めから75人の定員枠内で合格する「正規合格」となった事実だ。

臼井被告から1次試験の得点に10点を加算されたうえ、2次試験の小論文で高得点を上げた賢次の属性調整後の順位は87位(10点加算がなければ150位)と、余裕で補欠繰り上げ合格が可能な位置にあった。

ところが2次試験での適性検査と面接の結果が検討される入試委員会で、賢次より上位の合格候補者5人が不合格とされたことから(その前段階でセンター試験利用の上位合格者8人が除外されていた)、同点2人の74位に浮上した賢次は、結果として最下位の正規合格者になった。これも偶然の産物以外の何物でもなかった。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大