東京スカイツリーの開業以来、いっそう賑わいを増す東京・墨田区。最新の飲食店やショップが軒を連ねるいっぽうで、伝統的な技術を受け継ぐ職人たちが手仕事でものづくりをする小さな町工場や工房が、そこかしこに残っています。人の手が作りだすものには温度があり、物語が宿ります。それは「ものを大切にする」ことを、言葉なく教えてくれるはず。最近、伝統工芸が気になるという上白石萌音さん。江戸時代から続くガラス工芸を伝える工房を訪ね、江戸切子づくりを体験しました。
職人の手仕事が教えてくれた、責任あるものとの付き合い方

「うわぁ、キレイ……」。精巧なカットが施された江戸切子のグラスを覗き込み、うっとり。お店に入ってしばらく、上白石萌音さんは江戸切子の美しさに夢中で、迎えるスタッフの面々も、嬉しそうに見守る。

東京・墨田区にある「すみだ江戸切子館」は江戸時代から伝わるガラス工芸・江戸切子の技術を今に伝える工房兼ショップ。実際にガラスを削ってオリジナルのグラスを作れる江戸切子体験ができるということで、「来世は職人になりたい!」というほど手仕事に興味津々の萌音さんと一緒に訪れたのだ。

ここ数年、暮らしに手仕事による品を取り入れているという萌音さん。次第にそれを手がけた職人のことが気になり始めた。

「京都で作られている銅製の茶筒をいただいたのですが、繊細で美しい佇まいに惚れ惚れ。使うごとに質感が変わってきて、すごく愛おしい。これが人の手で作られているんだと思うと、本当に尊いなと感じますし、大事にしたいという気持ちが湧いてくるんです」