2023.01.29
# 人口減少
トラックドライバーが「不人気職種」である決定的理由…60~70代が荷物を届ける「物流崩壊」の未来
出生数が急減している人口減少日本で各業種・職種に何が起こるのか? 2030年、10億トン以上分の荷物が運べない?
ベストセラー『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
2030年、10億トン以上分の荷物が運べない
宅配ドライバー不足は需要の伸びだけが要因ではない。輸送頻度の増加が不足を加速させている。荷主企業が消費者の要求にきめ細かく応えるべく、「必要なときに必要なだけ届けてほしい」との注文が多くなったためだ。時間指定配送や当日配送といったサービスの高度化に、より一層輸送能力が追い付けなくなっているのである。
輸送サービスの高度化の背景には、付加価値に対する企業の考え方の変化がある。性能や品質、価格優位性といった「商品そのものの価値」だけでなく、商品を届ける上での「利便性」までを含めての付加価値向上を考える企業が増えたのだ。
荷主企業には、必要なタイミングで必要な量だけ届けてもらえれば巨大な在庫や保管スペースを抱えずに済むとの計算もある。運送会社へ支払う経費が多少増えようとも、「配達の利便性」向上で消費者の高評価を得られるメリットやコスト削減効果のほうが大きいということだ。
一方の運送業界は中小企業が多いという事情もあって、各社とも「発荷主」「着荷主」双方の細かな注文に応えようと必死だ。対応できなければ他社に仕事を奪われるとの危機感は強く、厳しい条件の仕事であっても受注する傾向にある。「便利な社会」を実現するためのしわ寄せが、どんどんドライバーへと向かう構図である。そして、それがドライバーの負担を大きくし、退職者を増やすことにつながっている。