2023.01.27

「気候変動と環境危機」の時代を乗り越える…そのために必要な「惑星的公共性」って、いったい何だ?

気候変動と環境危機が大きな問題であることは多くの人が認めるところだろう。

だが、それが技術的なレベルを超えて、人類の思考や行動に根本的な変更を迫っている点については、いまだよく理解されているとはいいがたい。

2023年1月に刊行された『人新世の人間の条件』(ディペシュ・チャクラバルティ著、早川健治訳、晶文社)は、文字通り、この課題に真正面から取り組む一冊だ。

本書の翻訳と対談相手をつとめた早川健治氏は、チャクラバルティ教授の提言を「惑星的公共性」のキーワードによって敷衍する。『人新世の人間の条件』より、訳者あとがきの一部を紹介する。

「惑星的公共性」とは何か?

『人新世の人間の条件』の本文および対談で、ディペシュ・チャクラバルティはエドワード・O・ウィルソンを参照しつつ、地球の半分を人間以外の生物種に残すための「撤退」を推奨している。

人類がもし共時的かつ惑星規模の物質的影響をもつ存在になってきているとするならば、ウィルソン的な撤退論は人新世的な展望に対する抵抗運動としても解釈できる。そこには、人間中心的な既存の公共性の概念とは別の公共性が芽を出してもいるだろう。

具体的には、地球上の他の存在を人間のための一方的な従属物としてみなすのではなく、人間から独立し、また人間に対して独自の視点や関係をもつ存在として理解する必然性がそこに生じている。このような公共性を以下では「惑星的公共性」と呼んでみたい。