こうした開発途上国や島嶼国は、排出量はほとんど削減しなくてもいいレベルであることも多い。ところが気候危機の悪影響を受けやすいこともあり、自分の問題であるという自己意識が強く、意欲的なのだとか。
「どこの国でも国民の意識や意欲がNDCに反映されているかというと一概には言えませんが、UNDPでは人々の声を政策に繋げたいという想いから、市民の声を政策決定者に届けています。その一環として、オックスフォード大学の協力を得て、世界の人口の過半数を占める50カ国で大きな世論調査をおこないました。すると、64%の人が気候危機は地球規模の緊急事態だと認識していることがわかったのです。日本に関して言うと、なんと79%の人が認識。これは、イギリス、イタリアに次いで世界で3番目の認識率で、ほぼ一般に浸透していると言えます」

つまり、日本では多くの人が気候変動を危機として理解しているということ。とはいえ、気候危機の影響・適応への国民の関心度が高まっているとは言えない。2018年12月に気候変動適応法が施行されたものの、気候危機対策が選挙の争点となるほど議論は表面化していない。
「日本で議論が盛り上がるのはこれからかもしれませんね。世論から少しずつ変わっていくのだと思います。レジ袋が今や当たり前じゃなくなったように、人々の意識は少しずつ変わっていくはず。政治が国を変えるのではなく、世論が政治を動かすのだと思います。だからこそ、身近なところから、今日何を買うか、食べるか、移動方法、どういうエネルギー源を使うかなど、日々の生活を通して政策議論を重ねるべき」