社会から国を動かす可能性

温室効果ガスの削減を新産業の育成に繋げ、多くの雇用を生み出そうという国は多い。欧州連合(EU)の「欧州グリーンディール」は雇用を創出しながら温室効果ガスの削減を促進することを目指している。
「ヨーロッパ南東部に位置する北マケドニアは、企業の力を活用したNDCが注目されています。産業をしっかりとグリーン化することで排出量を減らす政策を考えています。なんと、(1990年と比べて2030年までに)82%削減に必要な緩和策のための投資額の85%を民間が負担するとNDCに書かれています。高い目標に対する民間企業の理解と意欲によって国が動かされたことによる意欲的なNDCなのです」
再生可能エネルギーなどグリーン業界への投資はGDPを上げるとも言われている。
「経済大国である日本は企業の力が強いので、企業の取り組みによって社会が変化することもあり得ます。日本はG7の次期議長国ですし、前述のように認識率も高い。排出国ではありますが、自然災害や地震といった被害を受けてきた国としての適応策も持っているし、インフラを強化すべく努力してきた国ですから、これからもっとリーダーシップを発揮していく国だと思うんです」

現在は、再生可能エネルギーの導入が進み、温室効果ガス削減政策を順調に進めているヨーロッパやイギリスが、世界の気候危機に関する議論を賑わせている。ドイツでは環境問題を党の方針とする「緑の党」が支持率を伸ばし、イギリスでは気候変動法を強化。
「とはいえ必ずしもヨーロッパが気候危機対策で先行しているというわけではありません。今はウクライナ情勢によって不安定で、この冬にどうやって自分たちのエネルギーを確保しようかという目先の生活の不安があります。再生可能エネルギーが普及してきたとはいえ、エネルギーの安全保障と気候危機対策をどうやってバランスをとり、中長期的な政策にできるだろうかと考えると、今ががんばりどきと言えます」