「倫、性癖、依存、異性の友人、ヲタ活最優先人生など、さまざまな隠し事をしている夫婦は多く、そして私がこれまでに会って来た膨大な方々は一様にうまくいっていません。中でも、不倫以上に夫婦関係を壊滅的にする秘密は借金だと感じています」
そう語るのは、『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』『沼にはまる人々』などの著書を持つ沢木文さん。年間100組以上の夫婦を取材し、多くの悩みを目の当たりにしてきた。
ドラマ『忍者に結婚は難しい』(フジテレビ系木曜22時~)は、『ルパンの娘』などでも知られる横関大さんの小説が原作。菜々緒さん演じる蛍と鈴木伸之さん演じる悟郎が、互いに甲賀と伊賀の忍者であるという「秘密」を抱えた夫婦を演じている。それぞれ野党と与党のスパイ的な役割をしながら殺人事件に巻き込まれ……という、江戸川乱歩賞作家ならではのミステリでもあるが、家事の一切できない悟郎とのジェンダー的なすれ違いも注目されている。
普段の生活でもすれ違いがある中、夫婦の「秘密」が明らかになったとき、蛍と悟郎はおしまいになるのか、それとも――そんな夫婦の行く末も気になる中、沢木さんが「秘密を抱えた夫婦」の実例を伝える記事の前編では、沢木さんが「不倫より夫婦関係を破綻しうる秘密事」について語った。それは借金問題だ。
実際、大手広告代理店勤務の夫の不倫が発覚しながら、仲直りしたという奈緒さん(仮名・派遣社員・45歳)は、お金のことで即座に離婚を決めたという。どのような経緯で離婚を選んだのだろうか。
以下、沢木さんの解説後編です。
不倫発覚後、家族に尽くしたはずが…
「結婚15年目に、即刻、離婚をしました」
という奈緒さん。夫は大手広告代理店実は奈緒さんは夫の不倫に直面。しかし奈緒さんが性行為を好きではなく、それを断ったからことが発端だったということがわかり、話し合いにより離婚は回避しました。それでもその後「即刻離婚」となったのはどういうことなのでしょうか。
不倫発覚後、夫は家族に尽くしました。毎月15万円の生活費に加え、家賃と光熱費も支払いました。普段の育児と家事は奈緒さんに丸投げでしたが、長期休暇になると息子とふたりで旅をするなど、よき父だったのです。
「でも、コロナになり、行動が自粛されました。夫は。ステイホームの間は、ずっと部屋にこもっていました。エロサイトを見ている気配もあったし、無意味にイライラしたり、叫んだりしていたので、ちょっと嫌だなとは思っていたのですが……。
そのときから、もう異変が起こっていたんだと思います。私の知らないところで、夫は派手な生活を続けていて、借金をちょこちょこ増やしていた。大手広告代理店だから、銀行も消費者金融もいくらでも金を貸してくれますから」

夫は家賃15万円を払い、奈緒さんに生活費を15万円も渡していました。さらに女と遊び、部下におごり、ギャンブルまでしていたのです。夫の月給は手取りで60万円程度。だから、どう考えても足りるわけありません。
「私自身は質素な生活ですし、貯金も好きですから、夫のお金が回っていると思い込んでいたんです」