パリ協定に即した厳しい目標を自ら設定
刻々と迫る気候変動への対策が世界的に叫ばれている今、コロナ禍を経て、ようやくビジネスを再開し始めた旅行業界や航空産業にも、脱炭素化に向けて様々な課題解決が求められている。
そんな中、1933年に創立、今年10月に創業90周年を迎えるエールフランス航空はいち早く環境施策「Air France ACT」を掲げた。
新たなCO2排出削減戦略に向けた一連の活動指針となるこの施策は、航空機およびエンジン製造会社を始め、燃料供給会社、空港会社、航空交通管制機関、公的機関、学術研究機関、関連学界など、産学各界の関係各所と緊密な連携をはかるものだ。
その一つである「2030年までに乗客1人当たり1kmあたりのCO2排出量を2019年比で30%削減」は、「排出相殺」を除外し、直接的、間接的な排出の削減を目指す厳しいいもの。あえて厳しくしたのは、地球温暖化を+2℃以下に抑えることを目指すパリ協定との整合性をとるためだ。

CO2排出量の抑制と同時に除去も
いくら厳しい目標を立てても、絵に描いた餅では意味がない。
そうならないよう、たとえば残留排出量に相当する量のCO2を大気中から除去する活動に協力したり、燃料ライフサイクル全体でCO2排出量を平均80%削減しつつ、食糧供給と競合しないSAF(持続可能な航空燃料)の利用を促進したり、従来機との比較でCO2排出量が最大25%抑制する新型機材を導入したり。
エールフランスは具体的な結果を着々と積み上げている。
さらに2025年までに年間10億ユーロの予算を確保して、科学的見地に基づいた実践的かつ測定可能な行動を具体化した。
そうした姿勢は、機内や空港ラウンジにおいても変わらない。
乗客に提供する食材は、可能な限り地場産の旬の素材を使用したり、使い捨てプラスチック製品を対2018年に比べ、2023年までに9割の削減を実行するなどしている。

こうしたパリ協定の目標達成に向けた、実行力のある環境対策への取り組みを加速させる一方で、フランスの価値観「アール・ド・ヴィーヴル」のスピリットは揺らいでいない。
