ファッションブランド「ハルノブムラタ」が提案する新しいラグジュアリーの価値観が、今じわじわと注目を集めている。デザイナーの村田晴信さんは、ジル サンダーなどの海外メゾンで経験を積んだ実力派だ。“Eliana”を筆頭とするアイコンドレスは、「着る人の気持ちまで美しくする」として、感度の高い女性たちの間で人気を集めている。村田さんが捉える自然体のエレガンス、日本ならではのラグジュアリーとは?

「似合わない人がいない」と評価されるドレス

シンボリックなボタンが目を引く“Eliana”

通称“似合わない女性がいない”ドレス。世代や体型を超えて、クリーンな色気を引き出してくれる“Eliana”には、村田さんの女性を美しく見せるテクニックが散りばめられている。シンボリックなボタンに、贅沢で軽やかなボリューム感。そんな名作ドレスが生まれた背景を伺った。

ルーシー・シェルの実話を基にした書籍

「かつてデザインした半袖のドレスを母体に、“Eliana”としてアップデートしたのが2021年の秋冬でした。このシーズンは、女性として世界ではじめて車のグランプリチームをつくったルーシー・シェルさんをテーマに、コレクションを制作。彼女はレーサーでもあり、起業家でもあり、当時倒産しかけていたドライエというメーカーと新しい車を造り、チームを優勝へと導いた人物でもありました。つなぎを着て油まみれの日もあれば、毛皮を着てレストランに行く日もあるような人その美意識は、車の優美なフォルムやリベットの丸みにまで反映されていて、当時のモチーフを服に引用してみたら、彼女の人となりまで再現できるのでは?と感じたことから、ボタンのアイデアが生まれました。

“Eliana”は素材やディテールが毎シーズンアップデートされる
 

シンボリックなボタンは、イタリアのメーカーとオリジナルで制作しているもの。ドレスの曲線とボタンのインダストリアルな美しさの対比が、結果的に良い色気を生んでくれました。さらに、袖をまくったときの美しいボリューム感を計算して、袖口にスリットを入れたり、横に張りのある素材を使ったりすることで、仕草や姿勢の中に美しさが現れるように仕上げています。