ドイツ政府が世界最強戦車「レオパルト2」供与を発表…!ショルツ首相豹変のウラで何が起こっていたのか

1月25日、ドイツ政府は国防軍の持っている戦車「レオパルト2」のうちの14両を、ウクライナに供与すると発表。その他のヨーロッパの同盟国が供与するものと合わせて合計90両が送られるという。さらに、これまで米国製の戦車はウクライナの役には立たないと言い張っていた米国政府も、突然、自国製の戦車エイブラムス31両を送ると発表した。

これによりショルツ首相は、「ウクライナへの戦車の供与はドイツ単独ではなく、欧米の同盟国の連帯の下で行う」というかねてよりの持論がようやく証明できたと思ったらしく、同日の国会の質疑応答で国民に向かって、「私を信頼してください。ドイツ政府を信頼してください」と胸を張り、さらに、「(プーチン大統領の)帝国主義的戦争は成功しないだろう」と啖呵を切った。

本稿では、事態がここに至るまでの出来事を時系列で説明することを試みたい。

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ドイツ政府にかけられた圧力

レオパルト2は世界最強と言われるドイツ製のハイテク戦車で、春の地上戦を見越したウクライナが、喉から手が出るほど欲しがっていた。NATOのパートナーでこの戦車を一番多く所有しているのがギリシャとスペインで、それぞれ853両と347両。その他、フィンランドやポーランドも200両以上を所有している。

そのポーランドはロシアに対する恐怖心が極めて強く、ウクライナ支援の意志は固い。そこで、手持ちのレオパルトのうち14両をウクライナに供与したい意向だったが、他国に移転する場合にはドイツ政府の承認が必要という決まりで、しかし、ドイツは承認しないだろうと見られていた。

というのも、ドイツ政府自身がレオパルト2のウクライナへの供与には踏み切っておらず、それがウクライナに対して“非協力的である”として、内外からの強い批判を呼んでいたからだ。

 

1月20日、ドイツのラムシュタインにある米軍空軍基地に50ヵ国もの国防大臣らが集まり、ウクライナへの軍事支援について話し合うことになっていた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、事前にビデオで参加国に向かって「もっと(支援の)テンポを上げろ!」と大アピール。米国のオースティン国防相も、「ウクライナ国民が我々を見ている。クレムリンが、そして歴史が我々を見ているのだ!」と発破をかけた。誰に発破をかけたかと言うと、もちろん、ドイツにである。

そんなわけで19日、独メディアは一斉に、ドイツ政府はもうこれらの圧力に抗えないだろうと報じていた。つまり、この会合でドイツがレオパルト2の供与に踏みきるのは確実と、皆が考えていたわけだ。

ところが20日、会合が終わった後に速報で流れたのは、「レオパルト2についての決定は持ち越された」という意外な一報。会合後のぶら下がり取材で、「供与を躊躇する理由は何か?」と問い詰められたボリス・ピストリウス新国防相は、「躊躇などしていない。これから供与のための審査を始める」と苦しい言い訳をした。

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