厚生労働省が2023年1月31日までにパブリックコメントを募集しているテーマに以下のものがある。
2021年6月から緊急避妊薬を処方箋の必要なく薬局で購入できるようにする、いわゆる「OTC化」を進めるか否かについて検討を進めてきた。その検討材料として募集されているのだ。では、これまで緊急避妊薬とは一体どういうもので、世界ではどのように用いられ、入手できるようになっているのか。そして日本でいま議論されているのはなぜなのか。SRHR(リプロダクティブ・ヘルスアンドライツ=性と生殖における個人の自由と法的権利)について世界のデータも含め長く取材と研究を続けている福田和子さんに解説いただいている。
前編「「車がないと買えない」「高額すぎ」無料の国もある緊急避妊薬、日本3つのハードル」では、WHOが「安全で効果的、そして高品質」な「必須医薬品」に指定してきる緊急避妊薬を、無料で配布することを決めた国もあること、日本では物理的、心理的、金銭的ハードルが高いことをお伝えした。後編では緊急避妊薬OTC化に対する懸念点にどのようなものがあがっているのか、それに対する女性たちの率直な意見と共にお伝えする。
「性教育が先」「悪用されたらどうするんだ」
日本における緊急避妊薬のOTC化に対する道のりは非常に遅々としたものだ。当事者の声に耳を傾ける委員もいるものの、男性が多数を占める検討会では、日本産婦人科医会を筆頭に、あらゆる「懸念」が噴出、議論は平行線を辿っている。
その「懸念」やそれに対して挙がる「対応策」には、当事者の直面する困難や切実なニーズが伝わっていないと実感する内容がいくつもある。
特に以下のふたつは毎回いわれていることだ。
「性教育が不足し、対等でない男女の関係が生じやすい中、OTC化で安心安全でない関係が増加する」
「悪用防止のため、薬剤師の前で服用を!」
まず、「性教育」について。性教育はもちろん重要だ。一方、今この瞬間にも、コンドームのみでの避妊が一般的な日本における「対等でない男女の関係」の中で、緊急避妊薬を必要とする人がいる。そもそも避妊をしたがらない人間は、緊急避妊薬のアクセスが良かろうが悪かろうが、避妊しない。そういった人への取り組みの加速も大切だ。
しかし、だからといって緊急避妊薬へのアクセスを制限し、今苦しむ人を見捨て続けることで、安心・安全でない関係の増加を阻止する必要があるのか。私は憤りを覚える。性教育、緊急避妊薬、どちらが先という話ではなく、どちらもできるところから今すぐに促進すべき話ではないだろうか。

次に「悪用防止」について。この議論を聞いて思うのは、とにかく女性は信頼されていないということ。最も顕著なのが、悪用濫用を防ぐため、薬剤師の面前での服用とその後の産婦人科受診を必須条件にしようという動きだ。しかし、緊急避妊薬でそういった条件が必要という文献はないし、厚生労働省が行った海外調査でも、面前内服を求める国はなかった。
むしろWHOは、全例でのフォローアップ受診含め、緊急避妊薬の提供の際に女性にとって不必要な手順を避けること、また、将来必要となるときにより早く確実に服用するため、多めに渡しておくことや事前提供することさえ推奨している。
さらに、この面前内服に伴い、プライバシー確保のため、個室の保持など健康サポート薬局のような条件を満たした薬局でのみ緊急避妊薬を取り扱うべきという話もある。しかし、健康サポート薬局は全国に令和4年時点でたった3433件。沖縄は5件、佐賀は8件(厚生労働省発表より)。これではOTC化の意味がない。全国に6万件を超える薬局の強みを生かすOTC化を実現してほしい。
他にも、