老々介護の果てに「妻の首をタオルで絞めて殺した」…80歳元クリーニング店店主が語る「後悔はない。でも、一人きりで寂しい」

事件は2015年7月31日に起きた。大山健一さん(仮名・80歳)は千葉県船橋市内の自宅で妻・良子さん(仮名・享年73)の首を絞め、殺害。翌年12月、懲役5年・執行猶予3年の判決が下された。良子さんは認知症を患い、7年にもわたる『老老介護』の果てに、大山さんは50年連れ添った妻を手にかけた。判決後、筆者が自宅を訪ねると大山さんは『凶行』に至るまでの道のりを赤裸々に告白してくれたーー。前編記事『7年にわたる老々介護の果てに…「妻を殺した」80歳元クリーニング店店主の告白「結婚して50年、喧嘩をしたこともなかった」』から続く。

妻は何もできなくなっていった……

――良子さんが認知症と診断され、症状もどんどん悪化していった。夫婦でクリーニング店を営んでいた生活には、どんな変化が起きたのでしょうか。

「これまで女房がしていた仕事や家事を極力手伝うようになりました。でも、やはり女房は女房で自分の仕事に責任を持ちたいんでしょう。例えば食事の後片付けです。土鍋を食器棚にしまおうとすると、女房はそれを私から取り上げ、『私がやる!』と怒鳴りましたね。それは晩年まで続きました。最後まで自分がやりたかったんじゃないですかね。仕事も、私が手をかける半年前までは続けていました。

でも、その頃にはもう、受付もまともに出来ない状態で。ウチのお客さんは古くからの常連ばかりでしたから、お客さんが自分で料金を計算して伝票を作り、自分でお金をレジに入れていましたね。終いにはプレスをするだけの単純作業もできなくなったので、パートさんにやってもらうようになりました」

大山健一さん(仮名)大山健一さん(仮名)
 

――いろいろ仕事が奪われていく。そのときの奥様の様子は。

「何ら抵抗はなかったですよ。病気が進行した晩年の2、3ヵ月は、ほとんどプレス工場で座ってるだけでした。それでも女房は毎日、私と一緒に仕事場へ行きたがりました」

――奥様も葛藤されていたんでしょうね。最後まで大山さんの良きパートナーでいたかったんでしょうね。

「そうですね。そういう感覚はありましたね」

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