【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】
保険の不正販売や口座の借用、貯金の横領……。全国のJAで顧客の金融資産を狙った不祥事が絶えない中、岐阜県のJA職員たちは白寿を迎えた女性を食い物にしていた。その動機と手口とは—。
記憶にない保険契約が37件
'20年3月、都内に住む40代男性・新開希さん(仮名)にとって身に覚えのないJA共済の契約書が、岐阜県大垣市で一人暮らしをしている祖母・康子さん(99歳・仮名)の家から見つかった。
それは「養老生命共済」で、死亡時や介護状態になったときに金銭が保障される生命保険である。康子さんはJA(農業協同組合)の組合員。ただ、新開さんはJAとは無縁の生活を送ってきた。それなのに、なぜかJA共済の契約者となっていた。
新開さんは、保険事業も手がける金融機関に勤めている。保険営業の基本は知っているので、契約書を見た瞬間に「アウト」だと感じたという。

「契約者だという私とは一度も面会していないので。保険会社は契約者に商品を説明する義務があり、契約者と被保険者は加入時に、保険会社に健康状態を告知する義務があるわけですから」
さらに怪しんだのは、保険の販売元が岐阜県大垣市に本店がある「JAにしみの」だったことだ。契約書の住所欄には、新開さんが一度も住んだことがない康子さん宅がある本籍地が記されていた。
新開さんがJAにしみのに電話で問いただしたところ、契約は白紙にして、すべての掛け金はその出所である康子さんの口座に払い戻すという。それ以上の詳しい説明がないまま、やがて約43万7000円が祖母の口座に振り込まれてきた。
ところが、すぐにまたおかしな契約書が康子さん宅から見つかる。今度は新開さんの父を契約者と被保険者にした「JA安心倶楽部」。これはJAグループの「共栄火災海上保険」が扱う傷害保険だ。販売元のJAにしみのに再び苦情を入れると、過去の掛け金の総額約8万5000円が、その出所である康子さんの口座に払い戻された。