「死後の世界」が宗教や文化の問題でなくなる
「仮に私たちの住む世界が、本当はこのホログラフィック宇宙論が示すような姿であるとすれば、過ぎ去ってしまった人生のひとつひとつの場面や、人の意識、記憶といった形をもたないものも、宇宙のどこかに保存されているのかもしれません。
臨死体験をした人が時間や空間を超えて死んだ肉親と会ったり、知るはずのない死者の記憶を子供たちが語り出したりするのも、いわばこの『フィルム』に記録された情報に、偶然や何らかのきっかけがあって触れたためだと考えれば説明がつきます」(前出・斎藤氏)

最先端の科学がたどりついた宇宙観は奇しくも、これまで多くの人々が体験し、また数々の宗教が説いてきた「死後の世界」に通じているのだ。前出の大門氏も言う。
「長らく『死後の世界』は宗教や文化の問題でしたが、ようやく科学的なアプローチを試みる人々も現れてきています。かつて地動説が天動説を退けたように、ゆくゆくは『人は死んでも魂は残る』という学説が常識になるのかもしれません。
もちろん、私たちが生きている間には、その証明は難しいでしょう。そうだとしても『肉体が滅んでも、そこで終わりではない』と考えれば、死を前向きにとらえ、人生をよりよく生きようという気持ちが生まれてくるのではないでしょうか」
人類の叡智は、ついに命とは何か、魂とは何かという難問まで解き明かそうとしている。昨日の常識は、明日には通用しなくなるかもしれない。
「週刊現代」2023年2月4日号より