情欲、裏切り、復讐、陰謀、嫉妬がハイテンポで渦巻く「ジェットコースタードラマ」。カネと愛憎にまみれ犯罪を重ねる主人公に、視聴者たちは困惑し、熱狂した。
伝説のドラマ『もう誰も愛さない』について、出演した田中美奈子、脚本を担当した吉本昌弘、プロデューサーの楠田泰之に語ってもらった。
『もう誰も愛さない』…'91年4月からフジテレビ系の「木曜劇場」枠で放送されたトレンディドラマ。主演は吉田栄作。物語序盤からレイプや殺人シーンが描かれ、終盤には主要人物が次々と死んでいく衝撃の展開は話題となった。
スタッフも噴き出す急展開
田中 『もう誰も愛さない』(以降、『誰愛』)は、衝撃的なドラマでした。主要な登場人物がみんな悪人で、物語はどんでん返しの連続。しかも、終盤は出演者が一気に殺されてしまうんですから!
私が演じた宮本小百合は、自分では手を汚さず他人を思うままに操って敵をとことん追い詰めていく冷徹な悪女。それまで明るい役が多かった私からすると、物凄くギャップがあって大変でした。
吉本 脚本を書くほうは楽しかったですよ(笑)。田中さんはもちろん、小百合に唆されて悪に手を染めていく沢村卓也役の吉田栄作さん、二人に追い落とされて復讐の鬼となる田代美幸役の山口智子さんをはじめ、役者さんたちが見事に演じてくれるものだから、なおさらでした。

楠田 美奈子ちゃんも栄作くんも智子ちゃんも、このドラマを契機に役の幅を広げていったのが嬉しい。本作が放送された'91年は、『101回目のプロポーズ』や『東京ラブストーリー』と、フジテレビがヒットを連発した年でした。'80年代まではフジはドラマ後発組で、「4(日本テレビ)と6(TBS)を追い越そう」と、制作側はイキイキとしていた。『誰愛』はなかでも木曜22時という遅い時間の枠でもあり、ハードでシリアスな作風を打ち出しました。